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インサイダー取引規制その12(重要事実)

8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実

会社関係者等のインサイダー取引規制における業務等に関する重要事実とは、金商法166条2項各号に定められた事実で、当該会社と子会社について、それぞれ以下の4種類の事実(合計8種類)が規定されています。
(1)決定事実
(2)発生事実
(3)決算情報
(4)バスケット条項

このうち、決定事実と発生事実については、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準(軽微基準)に該当するものは除かれます。平成19年3月のコマツに関する課徴金納付命令に関して問題となった子会社の解散について軽微基準が設けられていなかった点については、平成20年の金商法改正において軽微基準が設けられています。軽微基準は、子会社の解散によるグループの資産の減少額が最近事業年度末日における純資産額の30%相当額未満と見込まれ、かつ、当該解散の予定日の属するグループの事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散によるグループの売上高の減少額が最近事業年度の売上高の10%相当額未満と見込まれること、とされています。
子会社の解散に関する軽微基準(新設)
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令
(子会社の機関決定に係る重要事実の軽微基準)
52条1項
5の2.法第166条第2項第5号ヘに掲げる事項 解散(合併による解散を除く。以下この号及び次項第5号の2において同じ。)による当該上場会社等の属する企業集団の資産の減少額が当該企業集団の最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該解散の予定日の属する当該企業集団の事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散による当該企業集団の売上高の減少額が当該企業集団の最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれること。
52条2項(子会社連動株式の場合)
5の2.法第166条第2項第5号ヘに掲げる事項 解散による当該連動子会社の資産の減少額が当該連動子会社の最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該解散の予定日の属する当該連動子会社の事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散による当該連動子会社の売上高の減少額が当該連動子会社の最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれること。

(1)決定事実(166条2項1号)

当該上場会社等の業務執行を決定する機関が166条2項1号に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと

が重要事実となります。

(A)業務執行を決定する機関

取締役会などの会社法所定の機関に限らず、実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であれば足りると解されています(日本織物加工事件最高裁判決、最高判平成11年6月10日、資料版商事法務183号60頁)。経営会議、常務会、役員ミーティング、役員会、社長、社長と他の役員、社長と他の役員の合議、会長等が該当しうると考えられます。判例や課徴金事例においても、決定事実については、取締役会決議がなされる以前に実質的な意思決定機関において決定がなされていると認定されている例がほとんどです。取締役会決議が必要な事項についての適時開示は、決議後になされますが、重要事実は、取締役会決議以前に発生していることになります。

(B)…についての決定をしたこと

それ自体の決定のみならず、それに向けた作業等を会社の業務として行うことを決定した場合も含まれます(日本織物加工事件最高裁判決)。

業務執行決定機関において、当該事項の実現を意図して行ったことは必要ですが、必ずしも当該事項が確実に実行されるとの予測が成り立つことは必要ないものと解されています(日本織物加工事件最高裁判決)。

村上ファンド事件地裁判決(東京地判平成19年7月19日)(167条違反の事案)は、実現可能性が全くない場合を除けば、あれば足り、(可能性の)高低は問題とならないとしていましたが、東京高裁は、決定はある程度の具体性を持ち、その実現を真摯に意図しているものでなければならないから、そのためには、その決定にはそれ相応の実現可能性が必要であるとしています(東京高判平成21年2月3日)。

(C)決定の有効性

法律上の瑕疵があり無効となる場合でも、投資者の投資判断に影響を及ぼすものであれば、決定に該当します。また、事後的に変更・取消・撤回が行われても、その前にインサイダー取引が行われていた場合には成否に影響しないと考えられています。

(D)中止決定について

中止決定については、「当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと」とされており、決定が公表(166条4項)されたものに限定されています。

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インサイダー取引規制その11(会社関係者等)

7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等(続きその2)

(2)元会社関係者(166条1項後段)

当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を166条1項各号に定めるところにより知った会社関係者であって、当該各号に掲げる会社関係者でなくなった後1年以内のものもインサイダー取引規制の対象となります。元会社関係者となるのは、会社関係者であったときに職務に関し知った場合であり、会社関係者でなくなった後に知った場合には情報受領者の問題となります。元会社関係者となる期間が1年とされているのは、1年あれば継続開示により公表されると考えられたためとされています(注5)。

(注5)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年47頁

(3)情報受領者(166条3項)

(A)第一次情報受領者(前段)

会社関係者・元会社関係者から、当該会社関係者等が第1項各号に定めるところにより知った同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者は、インサイダー取引規制の対象となります。

会社関係者・元会社関係者から情報の伝達を受けたもの、すなわち、第一次情報受領者に限られますが、第一次情報受領者か否かは実質的に検討されます。裁判例上、他人を介して重要事実の伝達を受けた者も情報受領者に該当するとされた例もあります(日新汽船事件、東京簡判平成2年9月26日、資料版商事法務81号35頁)。

また、会社関係者から情報を伝達された者であればよいので、その時点でその事実を知っていてもこれに該当しうることになります。

ただし、会社関係者が伝達する意思(認識)がない場合には該当しないと考えられていますので、会社関係者の話を偶然立ち聞きしたものや、会社関係者の落し物を拾得したものなどは、伝達する意思がないので、インサイダー取引には該当しないことになります。

伝達の対象となる情報は、重要事実の一部であってもかまわないと解されます(注6)。

(注6)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年123頁

(B)職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知ったもの(後段)

職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知ったものも、第一次情報受領者と同様にインサイダー取引規制の対象となります。平成10年の証取法改正で追加された条項です。情報受領者の属する法人への派遣社員の事例として、大日本土木事件があります(名古屋地判平成16年5月27日、資料版商事法務244号206頁)。また、NHK職員によるインサイダー取引にかかる課徴金納付命令の事例も、NHKの記者が職務上伝達を受けた重要事実を、その職務に関し知った他のNHKの職員によるインサイダー取引が問題となった事例です(注7)。

(注7)以下の3つの事例がNHK職員によるインサイダー取引の課徴金納付命令のケースです。
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1a.html
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1b.html
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1c.html
なお、http://blog.igi.jp/?eid=698742参照。 

(C)166条1項各号に定めるもの

情報受領者についても、166条1項「各号に掲げる者であって、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知ったものを除く」と規定されているので(166条3項)、第1項に該当する者は第3項には該当しないことになります。

(4)上場会社等

会社関係者は、上場会社等の役員等など、上場会社等と一定の関係を有する者ですが、「上場会社等」の定義は、163条1項の規定が適用されます。

「上場会社等」とは、第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(政令で定めるものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券又は取扱有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券の発行者をいいます。除外される有価証券については、金融商品取引法施行令27条、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令25条、その他政令で定める有価証券については金融商品取引法施行令27条の2が規定しています。

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金融商品取引法2条1項(抜粋)
第2条 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。
5.社債券(相互会社の社債券を含む。以下同じ。)
7.協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成5年法律第44号。以下「優先出資法」という。)に規定する優先出資証券
9.株券又は新株予約権証券

金融商品取引法施行令
(上場会社等の有価証券から除くもの)
第27条 法第163条第1項に規定する有価証券から除くものとして政令で定めるものは、法第2条第1項第5号に掲げる有価証券のうち当該有価証券の発行により得られる金銭をもって特定資産(資産流動化法第2条第1項に規定する特定資産をいう。以下この条において同じ。)を取得し、当該特定資産の管理及び処分により得られる金銭をもつて当該有価証券の債務が履行されることとなる有価証券(特定社債券を除く。)として内閣府令で定めるものとする。

(その発行者が上場会社等となる有価証券の範囲)
第27条の2 法第163条第1項に規定する法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(前条に規定するものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券又は取扱有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券は、次に掲げるものとする。
1.法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(前条に規定するものを除く。以下この条において同じ。)で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
2.法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(前号に掲げるものを除く。)を受託有価証券とする有価証券信託受益証券で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
3.外国の者の発行する証券又は証書のうち法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券の性質を有するもので、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
4.外国の者の発行する証券又は証書のうち法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券の性質を有するもの(前号に掲げるものを除く。)を受託有価証券とする有価証券信託受益証券で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
5.外国の者の発行する証券又は証書のうち法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券の性質を有するもの(前2号に掲げるものを除く。)の預託を受けた者が当該証券又は証書の発行された国以外の国において発行する証券又は証書で、当該預託を受けた証券又は証書に係る権利を表示するもののうち、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの

有価証券の取引等の規制に関する内閣府令
(適用除外有価証券)
第25条 令第27条に規定する内閣府令で定めるものは、法第2条第1項第5号又は第15号に掲げる有価証券(資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第10項に規定する特定約束手形を除く。)の性質を有するもののうち、次に掲げる要件をいずれも満たすものとする。
1.当該有価証券の発行を目的として設立又は運営される法人(次号において「特別目的法人」という。)に直接又は間接に所有者から譲渡(取得を含む。)される金銭債権その他の資産(次号において「譲渡資産」という。)が存在すること。
2.特別目的法人が当該有価証券を発行し、当該有価証券(当該有価証券の借換えのために発行されるものを含む。)上の債務の履行について譲渡資産の管理、運用又は処分を行うことにより得られる金銭を当てること。
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インサイダー取引規制その10(会社関係者等)

7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等(続き)

(B)会計帳簿閲覧等請求権を有する株主等【当該権利の行使に関し知つたとき】(166条1項2号

会計帳簿閲覧等請求権を有する株主等は
(a)当該上場会社等の会社法433条1項に定める権利(会計帳簿閲覧等請求権)を有する株主
(b)優先出資法に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者
(c)会社法433条3項に定める権利(親会社社員の会計帳簿閲覧等請求権)を有する社員等

の3つに分かれます。これらの株主、普通出資者又は社員等が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含みます)であるときはその役員等を、これらの株主、普通出資者又は社員が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含みます。

(a)当該上場会社等の会社法433条1項に定める権利(会計帳簿閲覧等請求権)を有する株主

当該上場会社等の会社法433条1項に定める権利(会計帳簿閲覧等請求権)を有する株主は、総株主の議決権ないし発行済株式の3%以上を有する株主で、共同で保有する場合を含みます。

(b)優先出資法に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者

優先出資法に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者については、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令48条により
(会社関係者となる協同組織金融機関の普通出資者)
第48条 法第166条第1項第2号に規定する内閣府令で定める者は、中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)第41条第3項(同条第5項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に定める権利を得た信用協同組合及び同法第9条の9第1項第1号の事業を行う協同組合連合会の普通出資者並びに労働金庫法(昭和28年法律第227号)第59条の3に定める権利を得た労働金庫及び労働金庫連合会の普通出資者とする。

と定められています。

(c)会社法433条3項に定める権利(親会社社員の会計帳簿閲覧等請求権)を有する社員等

会社法433条3項に定める権利(親会社社員の会計帳簿閲覧等請求権)を有する社員等については、同項に
会社法433条3項
株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第1項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

と規定されています。

(d)当該権利の行使に関し知ったとき

当該権利の行使に関し知ったときとは、当該権利行使の結果知った場合のほか、権利行使と密接に関連する行為により知った場合を含み、権利行使のための準備・調査・交渉等の過程で知った場合もこれにあたるとする見解が有力です(注1)。重要事実を知った方法は問わない点は1号の場合と同様です。なお、権利の行使に関し知ったときに該当しない場合や3%を有しない株主も、情報受領者に該当する可能性はあるので注意する必要があります。

(注1)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年38頁

(C)法令に基づく権限を有する者【当該権限の行使に関し知つたとき】(166条1項3号)

法令に基づく権限を有する者は、上場会社等に対し、法令に基づく権限を有する者をいい、許認可権限・調査権限などの行政権、国政調査権などの立法権、文書提出命令、差押・提出命令などの司法権に関するものが含まれるほか、地方公共団体に属する権限、法令の委任を受けて検査等を行う民間団体等の権限も含まれます。当該権限の行使に関し知ったときとは、当該権限の行使の結果知ったときのほか、当該権限の行使と密接に関連する行為により知った場合を含むとする見解が有力です(1号2号の場合と同様)(注2)。

(注2)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年39頁

(D)契約締結者又は締結交渉をしている者であって、当該上場会社等の役員等以外のもの【当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知ったとき】(166条1項4号)

(a)平成10年改正と契約締結交渉者

当初は契約締結者のみが規制されていましたが、平成10年の証取法改正により、契約締結交渉をしている者、交渉に関し知ったとき、が規制対象に加えられています。

(b)契約の内容等

契約締結者又は締結交渉をしている者については、契約内容は問わず、重要事実を知ることを内容とする契約に限定されないとする見解が多く、また、契約は書面でなくともよい(口頭によるものを含む)と解されています。秘密保持契約なども、ここでいう契約に含まれます。

(c)役員等

契約締結者等が法人であるときはその役員等を、法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含みます。

(d)契約の締結・交渉・履行に密接に関して知ったとき

当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知ったときとは、契約の締結・交渉・履行自体によって知った場合だけではなく、契約の締結・交渉・履行に密接に関連する行為によって知った場合を含むとする見解が有力な点は1号ないし3号の場合と同様です(注3)。また、重要事実を知った方法は問わない点も同様です。

(注3)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年42頁

(e)当該上場会社等の役員等以外のもの

契約締結者等は「当該上場会社等の役員等以外のもの」とされておりますので、1号の役員等に該当する場合にはさらに4号の契約締結者等に該当するものではないことになります。この点について、役員等に該当する者が、上場会社等と契約を締結しており、その者の職務とは関係なく、当該契約の締結・履行等に関して重要事実を知った場合には、「職務に関し知ったとき」という要件を欠くため1号の適用対象ではないことになりますが、この場合であっても「役員等」に該当することには変わりがないため、4号の適用もないことになるか否かが問題となります。この点については、1号の職務に関し知ったといえない場合には4号の適用対象となりうるとする見解も有力ですので(注4)、かかる見解に従っておくほうが妥当と思われます。たとえば、会社財産の処分に関して会社の代理権を有する顧問弁護士(顧問契約を締結している弁護士)が、当該処分とは関係なく、顧問業務に関して重要事実を知ったような場合がこれに該当します。

(注4)服部秀一「インサイダー取引のすべて」(商事法務研究会)2001年27頁

(E)第2号又は前号に掲げる者であって法人であるものの役員等【その者の職務に関し知ったとき】(166条1項5号)

その者が役員等である当該法人の他の役員等が、第2号(会計帳簿閲覧等請求権を有する株主等)又は前号(契約締結者等)に定めるところにより当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知った場合です。法人の場合に限られますので、法人以外の場合には、情報受領者に該当するかが問題となります。職務に関し知ったときの意義は、1号の場合と同様です。

URLhttp://igi.jp/link2.html(金商法等の法令関係リンク)

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インサイダー取引規制その9(会社関係者等)

インサイダー取引規制は、会社関係者等のインサイダー取引規制と、公開買付者等関係者のインサイダー取引規制にわかれます。まず会社関係者等のインサイダー取引規制の要件から解説します。

7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等

会社関係者等のインサイダー取引規制の対象者は、
(1)会社関係者
(2)元会社関係者
(3)情報受領者

の3つに分かれます。これらの者が、その属性に応じて、未公表の重要事実を、その職務に関し知ったとき等にインサイダー取引規制の対象となります。

(1)会社関係者(166条1項前段)

会社関係者は、重要事実を、その者の属性に応じて、その者の職務に関し知ったとき等に、インサイダー取引規制の対象となります。

会社関係者は、上場会社等の
(A)役員等【職務に関し知ったとき】
(B)会計帳簿閲覧等請求権を有する株主【権利行使に関し知ったとき】
(C)法令に基づく権限を有する者【権限行使に関し知ったとき】
(D)契約締結者・契約締結交渉中の者【契約の締結・交渉・履行に関し知ったとき】
(E)(B)または(D)と同一法人の他の役職員【職務に関し知ったとき】

の5つに分かれます(166条1項1号から5号)

(A)役員等【その者の職務に関し知ったとき】(166条1項1号)

役員等とは、当該上場会社等(親会社及び子会社を含む)の
(a)役員(会計参与が法人であるときは、その社員)
(b)代理人
(c)使用人その他の従業者

を3つに分かれます。

(a)役員
金商法21条1項2号は役員を取締役、会計参与、監査役若しくは執行役又はこれらに準ずる者と定義していますが、163条から167条は定義が適用される規定から除かれており、他に定義は設けられていませんので、役員の意義は解釈に委ねられていることになります。定義規定が設けられていないのは、この用語が使用される条文では多種多様な法人が対象となるからとされています(注1)。

この点については、株式会社では、取締役、会計参与、監査役、執行役(法令上の言わば正式な役員)がこれに該当し、執行役員、顧問、相談役などの事実上役員的な地位にあるものはこれに含まれないと解されています。ただし、執行役員、顧問、相談役などは「使用人その他の従業者」に該当すると考えられますので、いずれにせよ会社関係者等に該当することになります。

(注1)服部秀一「インサイダー取引規制のすべて」(商事法務)2001年24〜25頁

(b)代理人
民法99条1項は、代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる、と定めています。したがって、代理人とは、本人のためにすることを示して意思表示をなし、その効果を本人に対して生じさせる権限を有する者ということになります。本人から権限を付与された任意代理人と、法律上権限を付与されている法定代理人があります。インサイダー取引規制の対象となるのは、上場会社等の代理人ですので、上場会社等(親会社及び子会社を含む)の業務に関する代理権を付与された者となり、支配人(会社法10条、商法21条)や契約交渉などの代理人などが含まれることになります。

(c)使用人その他の従業者
使用人その他の従業者は、実際に会社の業務に従事するものであれば足り、雇用契約等の契約の有無や名称などは問わず、該当しうると解されています。また、業務に従事するのが継続的であるか一時的であるかも問いません。したがって、通常の従業員のほか、出向社員、アルバイト、派遣社員、事実上その会社の業務を手伝っていた者なども含まれることになります。出向社員については、出向先については、使用人その他の従業者(1号)、または、出向に関する契約を出向先と締結している出向元(契約締結者)の役員等(4号)として会社関係者に該当しうることになる(この点は派遣社員も同様です)と同時に、出向元との関係でも使用人その他の従業者として会社関係者に該当しうることになります。

(d)職務に関し知ったとき
その者の職務に関し知ったときの意義については諸説ありますが、職務行為自体により知った場合のほか、職務と密接に関連する行為により知った場合を含むとする見解が有力です(注2)。
そのほかには、職務行為自体により知った場合のほか、職務と密接に関連する行為により知った場合を含むが、その者の職務が当該重要事実を知りうるようなものでなければならないとする見解(注3)、有価証券の投資判断に影響を及ぼすべき特別な情報に自ら関与し、または接近しうる特別な立場にある者が、その特別な立場ゆえに重要な情報を知ったときとする見解(注4)、その職務の実行に関して知る必要のあるまたは知る立場にある情報を知った場合とする見解(注5)、などがあります。

職務は、その者の地位に応じて取り扱うべきすべての職務を含み、現に担当している職務に限られません。また、職務に関し知った場合であれば、重要事実を知った方法は問いません。上記の見解のいずれを採用するのかについては、判例上決着がついているわけではありませんが、インサイダー取引防止の観点から広く解しておくのが妥当と思われます。

(注2)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年36頁ほか
(注3)東京弁護士会会社法部会編「インサイダー取引規制ガイドライン」商事法務研究会1989年25頁
(注4)服部秀一「インサイダー取引のすべて」(商事法務研究会)2001年32頁
(注5)野村證券編「事例インサイダー取引〔新版〕」(金融財政事情研究会)1990年130頁

URLhttp://igi.jp/text.html(金融商品取引法情報)

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インサイダー取引規制その8(課徴金)

6.インサイダー取引規制違反の効果その5 課徴金(続きその2)

(3)インサイダー取引規制違反の課徴金事例

証券取引等監視委員会事務局は、平成20年6月に「金融商品取引法における課徴金事例集」を公表していますが、事例集に掲載されているもののうち、23事例、39件がインサイダー取引規制違反に関するものです。

その後、平成19事務年度にさらに1事例、1件、平成20事務年度に6事例、6件のインサイダー取引規制違反による課徴金納付命令が出されています。また、平成20年2月10日に証券取引等監視委員会により、「アルテック株式会社子会社社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について」が公表されていますので、これを含めれば平成20事務年度は、現在までに7事例、7件となります。合計すると、これまでに31事例、47件のインサイダー取引規制違反による課徴金事例があることになります。

金融庁(証券取引等監視委員会)の公表情報*冒頭の番号はいずれも金融庁のサイトに記載された番号です。
平成17事務年度(5事例、9件)
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/05/past/17.html
1 (株)ガーラの株券に係る内部者取引 18.2.8
2 (株)ガーラの株券に係る内部者取引 18.2.8
3 (株)ガーラの株券に係る内部者取引 18.2.8
4 利根地下技術(株)の株券に係る内部者取引 18.2.15
5 フジプレアム(株)の株券に係る内部者取引 18.5.9
6 フジプレアム(株)の株券に係る内部者取引 18.5.9
7 (株)アイネスの株券に係る内部者取引 18.5.26
8 日本プラスト(株)の株券に係る内部者取引 18.6.9
9 日本プラスト(株)の株券に係る内部者取引 18.6.9

平成18事務年度(7事例、9件)
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/05/past/18.html
1(株)パオの株券に係る内部者取引 18.10.2
3 (株)アロカの株券に係る内部者取引 18.12.25
4 (株)アロカの株券に係る内部者取引 18.12.25
5 (株)アロカの株券に係る内部者取引 18.12.25
8 ジャパン建材(株)の株券に係る内部者取引 19.2.26
9 (株)小松製作所の株券に係る内部者取引 19.3.30
11 (株)大塚家具の株券に係る内部者取引 19.5.29
12 ダイヤモンドリース(株)の株券に係る内部者取引 19.6.29
13 ユーエフジェイセントラルリース(株)の株券に係る内部者取引 19.6.29

平成19事務年度(12事例、21件)
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/19.html
2 (株)倉元製作所の株券に係る内部者取引 19.7.13
4 泉州電業(株)の株券に係る内部者取引 19.11.8
5 泉州電業(株)の株券に係る内部者取引 19.11.8
6 カッパ・クリエイト(株)の株券に係る内部者取引 19.11.15
8 (株)ベルックスの株券に係る内部者取引 20.1.11
9 (株)WDIの株券に係る内部者取引 20.1.11
12 (株)サンシティの株券に係る内部者取引 20.2.6
13 テクノエイト(株)ほか9社の株券に係る内部者取引 20.2.14
14 (株)天辻鋼球製作所ほか2社の株券に係る内部者取引 20.2.14
16 カッパ・クリエイト(株)ほか1社の株券に係る内部者取引 20.3.19
17 カッパ・クリエイト(株)の株券に係る内部者取引 20.3.19
18 カッパ・クリエイト(株)の株券に係る内部者取引 20.3.19
20 (株)マーベラスエンターテイメントの株券に係る内部者取引 20.4.9
22 (株)セタの株券に係る内部者取引 20.5.16
23 (株)セタの株券に係る内部者取引 20.5.16
24 (株)セタの株券に係る内部者取引 20.5.16
25 (株)セタの株券に係る内部者取引 20.5.16
26 (株)セタの株券に係る内部者取引 20.5.16
27 (株)セタの株券に係る内部者取引 20.5.16
28 (株)セタの株券に係る内部者取引 20.5.16
30 日本電子材料(株)の株券に係る内部者取引 20.5.21

平成20事務年度(平成20年2月19日現在6事例、6件)
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/05.html
3 平成20(判)2 (株)サンエー・インターナショナルの株券に係る内部者取引 20.8.22
6 平成20(判)5 (株)ヴァリックほか1社の株券に係る内部者取引 20.11.7
7 平成20(判)6 (株)ヴァリックの株券に係る内部者取引 20.11.7
8 平成20(判)7 (株)メディセオ・パルタックホールディングス元社員による内部者取引 20.11.18
9 平成20(判)10 (株)いい生活社員による内部者取引 20.11.18
14 平成20(判)13 ゴールドマン・サックス証券(株)社員による内部者取引 21.1.20

「アルテック株式会社子会社社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について」(証券取引等監視委員会)
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2009/2009/20090210.htm

現時点で事例集に未掲載の各事例の概要は以下のとおりです。
30 日本電子材料(株)の株券に係る内部者取引 20.5.21
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080521-2.html
同社の社員である違反行為者は、同社が平成20年3月期の業績予想を下方修正する事実をその職務に関し知り、この事実が公表される平成19年8月7日以前の同月6日に、株券合計3,400株を総額501万5,000円で売り付けたものである。
違反行為者 社員
重要事実 業績予想の下方修正(決算情報)
課徴金額 94万円

3 平成20(判)2 (株)サンエー・インターナショナルの株券に係る内部者取引 20.8.22
http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20080822-1.html
同社の役員である違反行為者は、同社が株式の発行を行うことを決定した事実をその職務に関し知り、この事実が公表される平成18年7月14日より以前の同年4月20日に、株券合計4,800株を総額2,907万1,000円で売り付けたものである。
違反行為者 役員
重要事実 新株発行(決定事実)
課徴金額 1246万円

6 平成20(判)5 (株)ヴァリックほか1社の株券に係る内部者取引 20.11.7
http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20081107-6.html
違反行為者は
(1)同社の役員であったが、同社の業務執行を決定する機関が(株)AOKIホールディングスとの間で株式交換を行うことについての決定をした旨の事実を、その職務に関し知り、この事実が公表される平成19年11月15日午後3時30分より前の同日に、(株)ヴァリックの株券合計8株を総額93万4000円で買い付け、
(2)(株)ラヴィスと秘密保持契約を締結していた(株)ヴァリックの役員として、同契約を履行していたものであったが、(株)ラヴィスの業務執行を決定する機関が(株)AOKIホールディングスとの間で株式交換を行うことについての決定をした旨の事実を、同契約の履行に関し知り、この事実が公表される平成19年11月15日午後3時30分より前の同月14日及び同月15日に、(株)ラヴィスの株券合計12株を総額97万2000円で買い付け
たものである。
違反行為者 役員・契約締結者の役員
重要事実 株式交換(決定事実)
課徴金額 34万円

7 平成20(判)6 (株)ヴァリックの株券に係る内部者取引 20.11.7
http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20081107-7.html
同社の社員であった違反行為者は、同社の業務執行を決定する機関が(株)AOKIホールディングスとの間で株式交換を行うことについての決定をした旨の事実を、その職務に関し知り、(株)ヴァリックを退職した後、この事実が公表される平成19年11月15日より前の同月2日及び同月7日に、(株)ヴァリックの株券合計2株を総額22万5000円で買い付けたものである。
違反行為者 元社員
重要事実 株式交換(決定事実)
課徴金額 5万円

8 平成20(判)7 (株)メディセオ・パルタックホールディングス元社員による内部者取引 20.11.18
http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20081118-4.html
同社の社員であった違反行為者は、同社の他の社員が、同社とクオール(株)が締結した守秘義務契約の履行に関して知った、クオール(株)の業務執行を決定する機関が(株)エーベルを吸収合併することについての決定をした旨の事実を、その職務に関し知り、(株)メディセオ・パルタックホールディングスを退職した後、この事実が公表される平成19年5月25日より前の同月14日から同月23日までの間に、クオール(株)の株券合計102株を買付価額2085万1000円で買い付けたものである。
違反行為者 契約締結者の(他の)元社員
重要事実 合併(決定事実)
課徴金額 118万円

9 平成20(判)10 (株)いい生活社員による内部者取引 20.11.18
http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20081118-5.html
同社の社員である違反行為者は
(1)同社が平成19年3月期の業績予想を下方修正する事実をその職務に関し知り、この事実が公表される平成19年1月31日より前の同月11日から同月30日までの間に、株券合計317株を総額6457万6000円で売り付け、
(2)同社が平成20年3月期の業績予想を下方修正する事実をその職務に関し知り、この事実が公表される平成19年10月29日午後5時50分より前の同月12日から同月29日までの間に、株券合計403株を総額3760万6500円で売り付け
たものである。
違反行為者 社員
重要事実 業績予想の下方修正(決算情報)
課徴金額 2079万円

14 平成20(判)13 ゴールドマン・サックス証券(株)社員による内部者取引 21.1.20
http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20090120-2.html
違反行為者は、 (株)AP8(現(株)レックス・ホールディングス)と公開買付け応募契約の締結の交渉をしていた者から、同人がその契約の締結の交渉に関し知った、同社が(株)レックス・ホールディングス(平成19年9月1日合併により解散)の株券の公開買付けを行うことについての決定をした事実の伝達を受け、この事実が公表される平成18年11月11日より前の同月8日に、株券17株を総額363万8000円で買い付けたものである。
違反行為者 公開買付者と契約締結の交渉をしていた者からの第一次情報受領者
重要事実 公開買付けの実施
課徴金額 23万円

平成20年2月10日「アルテック株式会社子会社社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について」(証券取引等監視委員会)
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2009/2009/20090210.htm
課徴金納付命令対象者は、同社の子会社社員であったが、アルテック株式会社が平成19年11月期の連結業績予想を上方修正する事実を、その職務に関し知り、この事実が公表される平成20年1月21日午後11時4分より以前の同月9日から同月21日までの間に、アルテック株式会社の株券合計1万4,900株を総額368万1,400円で買い付けたものである。
違反行為者 子会社社員
重要事実 連結業績予想の上方修正(決算情報)
課徴金額 55万円

URLhttp://igi.jp/counsel.html

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インサイダー取引規制その7(課徴金)

6.インサイダー取引規制違反の効果その5 課徴金(続き)

(2)課徴金の額の算出方法

課徴金の額は、違反類型ごとに一般的・抽象的に想定される経済的利益相当額として法定された算出方法に従い算出されます。違反者が実際に得た利益額そのものがいくらであるのかにかかわらず、法定された算出方法に従って課徴金の額が算出されることになります。したがって、行政庁の裁量の余地はなく、また、違反者が得た経済的利益を大きく上回るような制裁金的な課徴金が課せられることもありません。

インサイダー取引違反の場合には、以下の各場合に応じて課徴金の額が算出されます。平成20年の金商法改正により、従来の公表日翌日の終値を基準として課徴金の額を算出されていた点が、公表後2週間以内の最安値ないし最高値を基準に算出するものと変更されています。また、複数の違反がある場合(複数の場合に該当するとき)は、その合計額が課徴金の額となります。

(A)166条違反の場合(175条1項)

(a)重要事実の公表がされた日以前6月以内に売付け等を行っている場合(株価下落につながるネガティブ情報の場合を想定)
(売却金額−重要事実公表後2週間以内の最安値)×売却株数

(b)重要事実の公表がされた日以前6月以内に買付け等を行っている場合(株価上昇につながるポジティブ情報の場合を想定)
(重要事実公表後2週間以内の最高値−購入金額)×購入株数

(c)金融商品取引業者等が顧客の計算において売買等をした場合
当該売買等に係る手数料、報酬その他の対価の額として内閣府令で定める額

(B)167条違反の場合(175条2項)

(a)公開買付け等の実施または中止に関する重要事実の公表がされた日以前6月以内に売付け等を行っている場合(株価下落につながる公開買付け等の中止に関する情報の場合を想定)
(売却金額−重要事実公表後2週間以内の最安値)×売却株数

(b)公開買付け等の実施または中止に関する重要事実の公表がされた日以前6月以内に買付け等を行っている場合(株価上昇につながる公開買付け等の実施に関する情報の場合を想定)
(重要事実公表後2週間以内の最高値−購入金額)×購入株数

(c)金融商品取引業者等が顧客の計算において売買等をした場合
当該買付け等又は売付け等に係る手数料、報酬その他の対価の額として内閣府令で定める額

金融商品取引業者等が顧客の計算において売買等をした場合の手数料、報酬その他の対価の額として内閣府令で定める額は、平成20年の金商法改正で追加されたものです。このような場合、本来行ってはならない違反行為を通じて手数料等を得たものと考えられるため、それに相当する額の課徴金を課すとしたものです。課徴金府令は、投資運用業とそれ以外の場合を分けて、手数料等の額を定めています。

なお、「有価証券の売付け等」、「有価証券の買付け等」、最安値、最高値については、それぞれ定義規定が設けられています(175条3項ないし8項)。

URLhttp://igi.jp/service.html

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インサイダー取引規制その6(課徴金)

6.インサイダー取引規制違反の効果その5 課徴金

課徴金制度は、
証券市場への信頼を害する違法行為又は公認会計士・監査法人による虚偽証明)に対して、行政として適切な対応を行う観点から、規制の実効性確保のための新たな手段として、平成17年4月(公認会計士法については20年4月)から、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す
(http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/02.html)

ものとして導入されました。

金融商品取引法上の課徴金制度については、別エントリー(注1)で解説していますが、ここではインサイダー取引規制違反の場合に限定して解説します。課徴金納付命令に関する手続き等については、課徴金制度のエントリーをご参照下さい。

(注1)http://blog.igi.jp/?cid=35940

(1)インサイダー取引規制違反の課徴金制度

インサイダー取引規制違反の課徴金納付命令は、会社関係者等のインサイダー取引規制(金商法166条1項もしくは3項)または公開買付関係者等のインサイダー取引規制(金商法167条1項もしくは3項)の規定に違反して、自己の計算で有価証券の売買等をした者に対して行われます。

原則として自己の計算で売買等を行った者が課徴金の対象となりますが、自己の計算か否かは、名義ではなく実質的に判断されるので、他人名義を借用して取引を行った者や、他人の行為を支配しており実質的にその者の行為と認められる場合には、自己の計算で売買等を行った者として、その者が課徴金の対象とされる可能性があります。他方、自己の計算で売買等を行った者の他に、教唆者等がいた場合には、教唆者等は課徴金の対象とはならないことになります。

ただし、平成20年の金商法改正により、違反者が、自己と密接・特殊な関係にある者(密接・特殊関係者)の計算において違反行為をした場合には、自己の計算において違反行為をしたものとみなして、その者に対して課徴金が課せられることになっています。密接・特殊関係者の範囲は
(1)違反者がその総株主等の議決権の過半数を保有している会社その他の当該者と密接な関係を有する者として内閣府令で定める者【密接関係者】
(2)違反者と生計を一にする者その他の当該売買等をした者と特殊の関係にある者として内閣府令で定める者【特殊関係者】

です(金商法175条10項・11項)が、詳細は金融商品取引法第6章の2の規定による課徴金に関する内閣府令(課徴金府令)1条の23に規定されています。
【密接・特殊関係者】
(1)密接関係者
(A)違反者の親会社
(B)違反者の子会社
(C)違反者と同一の親会社をもつ会社等
(D)違反者(個人に限る)の同族会社(法人税法第2条第10号に規定する同族会社をいい、違反者が支配していないことが明らかであると認められる会社を除く)
(2)特殊関係者
(A)違反者(個人に限る)の親族
(B)違反者(個人に限る)と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(C)違反者の役員等
(D)(A)から(C)以外の者で違反者(個人に限る)から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
(E)(B)から(D)に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

また、役員等が、166条1項または3項に違反して、上場会社等の計算において違反行為を行った場合には、当該上場会社等に対して課徴金が課せられることになります(175条9項)。

(追記)

上場会社等の計算において違反行為を行った場合というのは、自社株買いの場合であり、コマツ及び大塚家具に対する各課徴金納付命令の事例を受けて「うっかりインサイダー」として問題となった事例です。報道されているところによれば、小松製作所の執行役員は、当該子会社の解散が重要事実に該当しないと思い込んでいたとのことであり、また、大塚家具は、取締役会の決議があってはじめて重要事実となると考えていたようですが、インサイダー取引規制違反の成立要件としては、ある事実が重要事実に該当することを認識している必要はなく、また、公表された予想値と新たに算出された予想との間に一定の差が生じたことが重要事実であり、予想値の修正が重要事実に該当するためには必ずしも取締役会の決議は必要ではありません。いずれも、重要事実を知りつつも、それを利用して利益を得る目的もなく、また、インサイダー取引として違法な行為に該当することも知らずに、自社株買いを行ったものであったため「うっかりインサイダー」となって課徴金納付命令を受けた事例です。検察官が起訴するか否かの裁量を有する(刑事訴訟法248条)刑事罰の場合と異なり、前述のとおり、課徴金制度においては、行政庁には課徴金を課すか否かの裁量は認められないため、課徴金が課せられています。「うっかりインサイダー」を防止するには、インサイダー取引規制について正しく理解するよりほかないですが、特に自社株買いを行う場合には、常にインサイダー取引となるリスクがあるため、未公表の重要事実がないことを慎重に確認した上で行う必要があります。
コマツに対する課徴金納付命令の概要
http://www.fsa.go.jp/news/18/syouken/20070330-7.html
同社の執行役員は、同社の子会社のオランダコマツファイナンス(有)が解散を行うことについての決定した事実を、その職務に関して知り、当該事実が公表される平成17年7月13日以前の同月4日から同月13日の間に、(株)小松製作所の計算において、株券131万6000株を11億7746万1000円で買い付けたものである。
違反行為者 同社
重要事実 子会社の解散(子会社の決定事実)
課徴金額 4378万円

大塚家具に対する課徴金納付命令の概要
http://www.fsa.go.jp/news/18/syouken/20070529-1.html
同社の役員は、同社が配当予想値の修正を行う事実をその職務に関し知り、当該事実が公表される平成18年2月23日以前の同月10日から同月22日の間に、(株)大塚家具の計算において、株券7万9000株を3億3295万5000円で買い付けたものである。
違反行為者 同社
重要事実 配当予想値の修正(決算情報)
課徴金額 3044万円

URLhttp://igi.jp/text.html

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インサイダー取引規制その5(民事責任)

5.インサイダー取引規制違反の効果その4 民事責任(続き)

(C)上場会社等に対する責任

上場会社等に対する責任については、役員、従業員、従業員、代理人、契約締結者、株主、法令に基づく権限を有する者、情報受領者など、行為者の属性に応じて考える必要があります。

まず、取締役その他の役員は、会社に対して善管注意義務・忠実義務(会社法330条、民法644条、会社法355条)を負っていますが、インサイダー取引それ自体が直接会社に損害を与えるわけではないので、直ちに善管注意義務・忠実義務違反による責任(会社法423条1項)を負うものではないと考えられます。ただし、役員が会社の業務または財産に関してインサイダー取引を行ったことによりかいやに罰金が科されたような場合には、会社に損害賠償責任を負う場合もあると思われます(注1)。また、役員のインサイダー取引違反により会社の信用が毀損され会社に損害が生じたような場合も、善管注意義務・忠実義務違反により、会社に損害賠償責任を負う場合があると思われます。

次に、従業員や代理人の場合は、契約(雇用契約、委任契約等)に基づく善管注意義務を負っていますので、基本的に役員と同様に解することができると考えられます。

また、契約締結者については、会社との契約における定めに従うことになると思われます。特別の定めがあればそれに従い、善管注意義務を負う関係にある場合には役員と同様に解することになり、それ以外の場合には上場会社等に対し責任を負うものではないと考えられます。契約締結交渉者、株主、法令に基づく権限を有する者、情報受領者については、直接の契約関係等がなく、上場会社に対して責任を負うものではないと考えられます。ただし、これらの者についても、その者のインサイダー取引違反により会社の信用が毀損され会社に損害が生じたような場合には、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはありうると思われます。

(2)上場会社等の責任

上場会社等が重要事実等の公表を遅滞しまたは怠ったために、インサイダー取引が行われた場合には、公表の遅滞ないし懈怠により損害を与えたものとして、上場会社等が(インサイダー取引を行った者以外の)他の投資家に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負うかが問題となりますが、この場合、不法行為が成立するためには、上場会社等による重要事実等の公表の遅滞ないし懈怠が違法である必要があります。

公表の遅滞ないし懈怠については、適時開示の問題として考えると、適時開示は、証券取引所の規則等に基づいて行われているものであるため、それをもって直ちに違法と考えるのは困難と思われます。ただし、会社情報開示の責任者である代表取締役社長の保有株式を売り抜けさせるために、取締役が金員でデフォルト情報の開示を故意に遅延させていたような場合は、遅延の間に当該会社の有価証券を買い付けた者の会社に対する損害賠償を認めてもよいとされています(服部秀一「インサイダー取引のすべて」(商事法務研究会)2001年316頁)。このように悪質性が強い場合には、違法と評価され、上場会社等が不法行為に基づく損害賠償責任を負う場合もあると思われます。

他方、公表の遅滞ないし懈怠について、上場会社等の有価証券報告書、有価証券届出書等の法定開示書類の虚偽記載等が認められるような場合には、虚偽記載等に基づく損害賠償責任を負うことになります。

(3)役員の欠格事由・従業員等の社内処分

インサイダー取引規制違反の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日(執行猶予が付されている場合は執行猶予期間が満了したとき)から2年を経過しない者は、会社の取締役、監査役、執行役になることができません(会社法331条1項3号、335条1項、402条4項)。したがって、インサイダー取引規制違反の罪で有罪判決を言い渡された会社の取締役、監査役、執行役は、その地位を失うことになります。

また、取締役、監査役、執行役、従業員等は、会社の社内規定に基づく処分を受けることになります。

URLhttp://igi.jp/text.html

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インサイダー取引規制その4(民事責任)

5.インサイダー取引規制違反の効果その4 民事責任

インサイダー取引規制違反の民事責任については、金融商品取引法上、特別の規定は設けられていません。インサイダー取引規制導入時の証券取引審議会の「内部者取引の規制のあり方について」(昭和63年2月24日)で、インサイダー取引を行った者の相手方に対する損害賠償について実効性を持ちうる措置を講ずるべきであるが、取引所取引については、原告適格、訴訟手続等について慎重な検討が必要であり、中長期的な課題とされていますが、20年余りを経過した現在までのところ、特別な規定は設けられていません。したがって、民法等の一般法に基づく責任を負うか否かを検討することになります。

(1)インサイダー取引規制違反を行った者の責任

インサイダー取引を行った会社関係者等の民事責任としては、取引の相手方(他の投資家)に対する責任と、インサイダー取引の対象となった株券等の発行会社である上場会社等に対する責任が考えられます。取引の相手方(他の投資家)に対する責任については、取引所取引(市場取引)と相対取引を分けて考える必要があります。

(A)取引所取引(市場取引)

まず、取引の相手方(他の投資家)に対する責任については、まず、取引所取引(市場取引)によってインサイダー取引が行われた場合には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)ないし不当利得返還請求(民法703条〜)を検討することになりますが、この場合そもそも相手方を特定することが非常に困難です。この点について、東京地判平成3年10月29日(金融法務事情1321号23頁)は、不法行為の成立要件である因果関係について、
証券取引所における株式取引では、個々の顧客の委託注文は、証券会社を通じて証券取引所に集約され、値段及び時間を基準にして集計された売り注文と買い注文が集団的に結び付けられて注文が成立する。したがって、この場合、被告の株式売却と原告の株式買受けとの間に売買が成立したというためには、まず、集団競争売買の中で、被告の売り注文と原告の買い注文とが、現実に結び付けられたことが、原告によって主張立証されなければならない。

としていますが、かかる立証はきわめて困難です。

また、仮に因果関係が認められる場合であっても、インサイダー取引を行った者が相手方に自分が未公表の重要事実を知っていることを告知しないで取引しなかったことが違法である必要があり、さらに、損害についても、株券等の価格はその時々の各種事情により変化しており、インサイダー取引による損害を立証することも簡単なことではありません。

不当利得返還請求については、同様に相手方の特定(因果関係)の問題があるほか、法律上の原因についても、インサイダー取引は売買等の原因に基づいてなされるものであるため、通常は法律上の原因が認められるものと考えられます。

したがって、インサイダー取引を行った会社関係者等に対し、取引の相手方(他の投資家)が損害賠償等を請求することには非常に困難が伴うことになりますが、そのために前述の証券取引審議会の「内部者取引の規制のあり方について」(昭和63年2月24日)は、実効性を持ちうる措置を講ずるべきであるとしたものと考えられます。

(B)相対取引

次に、相対取引の場合には、相手方の特定という問題は当然ありません。この場合、債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)、不法行為に基づく損害賠償請求ないし不当利得返還請求を行うことが考えられますが、インサイダー取引を行った者に、信義則上、相手方に自分が未公表の重要事実を知っていることを告知する義務を負う場合には、義務違反(債務不履行)が認められ、あるいは、告知を行ったことにより違法となり、債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求が認められうると考えられます。

かかる告知義務が認められる場合としては、例えば、売主が上場企業等の契約締結者である証券会社である場合に、未公表の重要事実等を知りながら、一般の個人投資家に売却したケースが挙げられています(服部秀一「インサイダー取引のすべて」(商事法務研究会)2001年314頁(注2))。

また、不当利得返還請求については、法律上の原因の有無が問題となりますが、インサイダー取引違反の取引も当然には無効とならないものの、反社会性が強く公序良俗違反の場合には取引は無効になるので、法律上の原因がなく、相手方は不当利得返還請求もできるものとされています(上記服部316頁(注6))。

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インサイダー取引規制その3(刑事罰)

4.インサイダー取引規制違反の効果その3 刑事罰その2(没収・追徴)

(3)没収・追徴
(A)インサイダー取引によって得た財産と、(B)インサイダー取引によって得た財産の対価として得た財産、インサイダー取引によって得た財産がオプションその他の権利であるときはその権利の行使により得た財産は、没収されることになります(金商法198条の2第1項)。また、没収をすることができないときは、その価額を追徴することになります(同条2項)。

これはいわゆる必要的没収・追徴の規定であり、平成10年の改正で、インサイダー取引によって取得した財産を没収・追徴することでインサイダー取引を防止すべく、新たに設けられたものです。それ以前は、任意的没収・追徴の規定(刑法19条、19条の2)によって、裁判所の裁量により没収・追徴するか否かが決められていました。

上記の規定の存在により、上記の財産はすべて没収・追徴されることになります。但し、その取得の状況、損害賠償の履行の状況その他の事情に照らし、当該財産の全部又は一部を没収することが相当でないときは、これを没収しないことができるものとされています(金商法198条の2ただし書)。

(関連条文)

金融商品取引法
第198条の2 次に掲げる財産は、没収する。ただし、その取得の状況、損害賠償の履行の状況その他の事情に照らし、当該財産の全部又は一部を没収することが相当でないときは、これを没収しないことができる。
1.第197条第1項第5号若しくは第2項又は第197条の2第13号の罪の犯罪行為により得た財産
2.前号に掲げる財産の対価として得た財産又は同号に掲げる財産がオプションその他の権利である場合における当該権利の行使により得た財産
2 前項の規定により財産を没収すべき場合において、これを没収することができないときは、その価額を犯人から追徴する。

刑法
(没収)
第19条 次に掲げる物は、没収することができる。
1.犯罪行為を組成した物
2.犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
3.犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
4.前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

(追徴)
第19条の2 前条第1項第3号又は第4号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。


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