インサイダー取引規制その21(重要事実の公表)
9.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その3 「公表」
3−4 重要事実の公表
3−4−1 「公表」の意義
インサイダー取引規制は、重要事実が「公表」される前に特定有価証券等の売買等を行うことを禁止するものであり、「公表」後の売買等は禁止されていません。つまり、重要事実の「公表」後はインサイダー取引とはならないので、「公表」はインサイダー取引規制を解除する要件としての意味を有することになります。
金商法166条4項は、以下の場合の「公表」の方法を定めています。いずれもインサイダー取引の成立範囲にかかわるものですが、166条1項・3項の重要事実の「公表」が前述のとおり、インサイダー取引規制を解除する要件としての意味を有するので、特に重要です。
(1)166条1項・3項の重要事実の「公表」
(2)166条2項1号の業務執行決定機関の決定の「公表」
(3)166条2項3号の上場会社等の売上高等の直近の予想値・前事業年度の実績値の「公表」
(4)166条2項5号の子会社の業務執行決定機関の決定の「公表」
(5)166条2項7号の子会社の売上高等の直近の予想値・前事業年度の実績値の「公表」
3−4−2 「公表」の方法
金商法166条4項は、「公表」の方法として、以下の2つを規定しています。公表方法は、以下の2つに限定されており、その他の方法、例えば、新聞、テレビ等のマスコミによりいわゆるスクープ報道がなされたり、会社の関係者等がインターネット上に情報をリークしたりしても、下記の2つの法定の方法による公表がなされない限り、「公表」されたものとは認められず、インサイダー取引規制は解除されません。
上記(1)の「政令で定める措置」として、金商法30条は、以下の2つの措置を定めています。
【参照条文】
(金商法)
166条4項
第1項、第2項第1号、第3号、第5号及び第7号並びに前項の公表がされたとは、上場会社等に係る第1項に規定する業務等に関する重要事実、上場会社等の業務執行を決定する機関の決定、上場会社等の売上高等若しくは第2項第1号トに規定する配当、上場会社等の属する企業集団の売上高等、上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関の決定又は上場会社等の子会社の売上高等について、当該上場会社等又は当該上場会社等の子会社(子会社については、当該子会社の第1項に規定する業務等に関する重要事実、当該子会社の業務執行を決定する機関の決定又は当該子会社の売上高等に限る。以下この項において同じ。)により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと又は当該上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社が提出した第25条第1項に規定する書類(同項第11号に掲げる書類を除く。)にこれらの事項が記載されている場合において、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されたことをいう。
(金商法施行令)
(公表措置)
第30条 法第166条第4項又は第167条第4項に規定する上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社又は公開買付者等により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこととは、次の各号に掲げる措置のいずれかがとられたこととする。
1.法第163条第1項に規定する上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社を代表すべき取締役若しくは執行役(協同組織金融機関を代表すべき役員を含む。以下この項において同じ。)若しくは当該取締役若しくは執行役から重要事実等(法第166条第4項に規定する上場会社等に係る同条第1項に規定する業務等に関する重要事実、上場会社等の業務執行を決定する機関の決定、上場会社等の売上高等若しくは同条第2項第1号トに規定する配当、上場会社等の属する企業集団の売上高等、上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関の決定又は上場会社等の子会社の売上高等をいう。以下この項において同じ。)を公開することを委任された者又は法第167条第1項に規定する公開買付者等(法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)にあっては、当該法人を代表すべき者又は管理人)若しくは当該公開買付者等から同条第4項に規定する公開買付け等事実(以下この項において「公開買付け等事実」という。)を公開することを委任された者が、当該重要事実等又は当該公開買付け等事実を次に掲げる報道機関の2以上を含む報道機関に対して公開し、かつ、当該公開された重要事実等又は公開買付け等事実の周知のために必要な期間が経過したこと。
イ 国内において時事に関する事項を総合して報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社及び当該新聞社に時事に関する事項を総合して伝達することを業とする通信社
ロ 国内において産業及び経済に関する事項を全般的に報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社
ハ 日本放送協会及び一般放送事業者
2.法第163条第1項に規定する上場会社等が、その発行する有価証券を上場する各金融商品取引所(当該有価証券が店頭売買有価証券である場合にあっては当該有価証券を登録する各証券業協会とし、当該有価証券が取扱有価証券である場合にあっては当該有価証券の取扱有価証券としての指定を行う各認可金融商品取引業協会とする。以下この号において同じ。)の規則で定めるところにより、重要事実等又は公開買付け等事実(上場株券等(法第24条の6第1項に規定する上場株券等をいう。第33条において同じ。)の法第27条の22の2第1項に規定する公開買付けに係るものに限る。以下この号において同じ。)を当該証券取引所に通知し、かつ、当該通知された重要事実等又は公開買付け等事実が、内閣府令で定めるところにより、当該証券取引所において公衆の縦覧に供されたこと。
2 前項第1号に規定する周知のために必要な期間は、同号イ、ロ又はハに掲げる報道機関のうち少なくとも2の報道機関に対して公開した時から12時間とする。
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金商法166条4項は、以下の場合の「公表」の方法を定めています。いずれもインサイダー取引の成立範囲にかかわるものですが、166条1項・3項の重要事実の「公表」が前述のとおり、インサイダー取引規制を解除する要件としての意味を有するので、特に重要です。
(1)166条1項・3項の重要事実の「公表」
(2)166条2項1号の業務執行決定機関の決定の「公表」
(3)166条2項3号の上場会社等の売上高等の直近の予想値・前事業年度の実績値の「公表」
(4)166条2項5号の子会社の業務執行決定機関の決定の「公表」
(5)166条2項7号の子会社の売上高等の直近の予想値・前事業年度の実績値の「公表」
3−4−2 「公表」の方法
金商法166条4項は、「公表」の方法として、以下の2つを規定しています。公表方法は、以下の2つに限定されており、その他の方法、例えば、新聞、テレビ等のマスコミによりいわゆるスクープ報道がなされたり、会社の関係者等がインターネット上に情報をリークしたりしても、下記の2つの法定の方法による公表がなされない限り、「公表」されたものとは認められず、インサイダー取引規制は解除されません。
(1)当該上場会社等又は当該上場会社等の子会社により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと(子会社については、当該子会社の第1項に規定する業務等に関する重要事実、当該子会社の業務執行を決定する機関の決定又は当該子会社の売上高等に限る。)
(2)当該上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社が提出した25条1項に規定する書類(同項11号に掲げる書類を除く。)にこれらの事項が記載されている場合において、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されたこと
上記(1)の「政令で定める措置」として、金商法30条は、以下の2つの措置を定めています。
(1−A)
163条1項に規定する上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社を代表すべき取締役若しくは執行役(協同組織金融機関を代表すべき役員を含む。)若しくは当該取締役若しくは執行役から重要事実等(166条4項に規定する上場会社等に係る同条1項に規定する業務等に関する重要事実、上場会社等の業務執行を決定する機関の決定、上場会社等の売上高等若しくは同条2項1号トに規定する配当、上場会社等の属する企業集団の売上高等、上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関の決定又は上場会社等の子会社の売上高等をいう。)を公開することを委任された者が、当該重要事実等を次に掲げる報道機関の2以上を含む報道機関に対して公開し、かつ、当該公開された重要事実等の周知のために必要な期間が経過したこと。
イ 国内において時事に関する事項を総合して報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社及び当該新聞社に時事に関する事項を総合して伝達することを業とする通信社
ロ 国内において産業及び経済に関する事項を全般的に報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社
ハ 日本放送協会及び一般放送事業者
(1−B)
163条1項に規定する上場会社等が、その発行する有価証券を上場する各金融商品取引所(当該有価証券が店頭売買有価証券である場合にあっては当該有価証券を登録する各証券業協会とし、当該有価証券が取扱有価証券である場合にあっては当該有価証券の取扱有価証券としての指定を行う各認可金融商品取引業協会とする。)の規則で定めるところにより、重要事実等を当該証券取引所に通知し、かつ、当該通知された重要事実等が、内閣府令で定めるところにより、当該証券取引所において公衆の縦覧に供されたこと。
【参照条文】
(金商法)
166条4項
第1項、第2項第1号、第3号、第5号及び第7号並びに前項の公表がされたとは、上場会社等に係る第1項に規定する業務等に関する重要事実、上場会社等の業務執行を決定する機関の決定、上場会社等の売上高等若しくは第2項第1号トに規定する配当、上場会社等の属する企業集団の売上高等、上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関の決定又は上場会社等の子会社の売上高等について、当該上場会社等又は当該上場会社等の子会社(子会社については、当該子会社の第1項に規定する業務等に関する重要事実、当該子会社の業務執行を決定する機関の決定又は当該子会社の売上高等に限る。以下この項において同じ。)により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと又は当該上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社が提出した第25条第1項に規定する書類(同項第11号に掲げる書類を除く。)にこれらの事項が記載されている場合において、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されたことをいう。
(金商法施行令)
(公表措置)
第30条 法第166条第4項又は第167条第4項に規定する上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社又は公開買付者等により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこととは、次の各号に掲げる措置のいずれかがとられたこととする。
1.法第163条第1項に規定する上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社を代表すべき取締役若しくは執行役(協同組織金融機関を代表すべき役員を含む。以下この項において同じ。)若しくは当該取締役若しくは執行役から重要事実等(法第166条第4項に規定する上場会社等に係る同条第1項に規定する業務等に関する重要事実、上場会社等の業務執行を決定する機関の決定、上場会社等の売上高等若しくは同条第2項第1号トに規定する配当、上場会社等の属する企業集団の売上高等、上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関の決定又は上場会社等の子会社の売上高等をいう。以下この項において同じ。)を公開することを委任された者又は法第167条第1項に規定する公開買付者等(法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)にあっては、当該法人を代表すべき者又は管理人)若しくは当該公開買付者等から同条第4項に規定する公開買付け等事実(以下この項において「公開買付け等事実」という。)を公開することを委任された者が、当該重要事実等又は当該公開買付け等事実を次に掲げる報道機関の2以上を含む報道機関に対して公開し、かつ、当該公開された重要事実等又は公開買付け等事実の周知のために必要な期間が経過したこと。
イ 国内において時事に関する事項を総合して報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社及び当該新聞社に時事に関する事項を総合して伝達することを業とする通信社
ロ 国内において産業及び経済に関する事項を全般的に報道する日刊新聞紙の販売を業とする新聞社
ハ 日本放送協会及び一般放送事業者
2.法第163条第1項に規定する上場会社等が、その発行する有価証券を上場する各金融商品取引所(当該有価証券が店頭売買有価証券である場合にあっては当該有価証券を登録する各証券業協会とし、当該有価証券が取扱有価証券である場合にあっては当該有価証券の取扱有価証券としての指定を行う各認可金融商品取引業協会とする。以下この号において同じ。)の規則で定めるところにより、重要事実等又は公開買付け等事実(上場株券等(法第24条の6第1項に規定する上場株券等をいう。第33条において同じ。)の法第27条の22の2第1項に規定する公開買付けに係るものに限る。以下この号において同じ。)を当該証券取引所に通知し、かつ、当該通知された重要事実等又は公開買付け等事実が、内閣府令で定めるところにより、当該証券取引所において公衆の縦覧に供されたこと。
2 前項第1号に規定する周知のために必要な期間は、同号イ、ロ又はハに掲げる報道機関のうち少なくとも2の報道機関に対して公開した時から12時間とする。
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