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インサイダー取引規制その13(重要事実/決定事実)

8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続き)

(E)個々の決定事実(166条2項1号)

個々の決定事実は、以下のとおりです。金商法166条2項1号の列挙事由と、金融商品取引法施行令28条に規定されています。また、軽微基準については、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令49条に規定されています。引用のかたちになっている部分が軽微基準です。軽微基準が設けられていないものについては、その決定自体が投資家の投資判断に重大な影響を及ぼすと考えられていることになります。

なお、最近事業年度とは、重要事実の発生日の属する事業年度の前事業年度です(中止が問題となる場合など、時期がずれる場合で事業年度をまたぐ場合には、最近事業年度も変わってくる可能性があることに注意する必要があります。)。

イ 株式(優先出資を含む)・新株予約権の募集

会社法第199条第1項に規定する株式会社の発行する株式若しくはその処分する自己株式を引き受ける者(協同組織金融機関が発行する優先出資を引き受ける者を含む。)の募集(処分する自己株式を引き受ける者の募集をする場合にあっては、これに相当する外国の法令の規定(当該上場会社等が外国会社である場合に限る。)によるものを含む。)又は同法第238条第1項に規定する募集新株予約権を引き受ける者の募集についての決定が決定重要事実となります。
優先出資をその券面額を発行価額として優先出資者に対しその有する優先出資の数に応じて発行する場合
【優先出資1口に対して発行する優先出資の割合が0.1未満であること】
その他の場合
【払込金額の総額が1億円未満であると見込まれること】

株式の募集についての決定は、業務執行決定機関が、株式の募集それ自体や株式の募集に向けた作業等を会社の業務として行うことを決定したことをいうと解されているので(日本織物加工事件最高裁判決)、株式の募集にあたっては、取締役会決議において募集の詳細が決定されるよりも、かなり前の時期に重要事実が発生していることになります。

新株予約権は、新株予約権付社債に付されたものでもかまいませんが、社債については普通社債の発行は、ここでいう重要事実とはされていません。

株式・新株予約権の発行に関し、発行登録がなされることがありますが、発行登録をすることのみを決定し、具体的な新株等の発行については未定である場合には、重要事実とはならないとの指摘があります(注1)。

(注1)松本真輔「最新インサイダー取引規制―解釈・事例・実務対応」(商事法務研究会)2006年74頁

ロ 資本金の額の減少
【なし】

ハ 資本準備金又は利益準備金の額の減少
【なし】

ニ 自己株式の取得

会社法第156条第1項(同法第163条及び第165条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定(当該上場会社等が外国会社である場合に限る。)による自己の株式の取得についての決定が重要事実となります。
【なし】

ホ 株式無償割当て
【1株に対して割り当てられる株式が0.1未満であること】

ヘ 株式(優先出資法に規定する優先出資を含む。)の分割
【1株に対して増加する株式の数の割合が0.1未満であること】

ト 剰余金の配当
【前事業年度の1株・1口あたりの剰余金配当額からの増減が20%未満であること】

チ 株式交換

株式交換、株式移転、合併、会社分割、事業譲渡などのM&Aについては、一定以上の期間の検討・交渉を経てから実施されることになりますが、決定事実となる時期は、実施を正式決定して適時開示等を行うよりもかなり早い時期になるのが通常です。場合により、数ヶ月から1年程度前から重要事実が発生していることになりますので、発生時期について特に注意が必要な重要事実のひとつです。
完全親会社となる場合において
【株式交換完全子会社となる会社の最近事業年度の末日における総資産の帳簿価額が会社の最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であり、かつ、当該株式交換完全子会社となる会社の最近事業年度の売上高が会社の最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満である場合】
【子会社との間で行う株式交換】
(なお、完全子会社となる場合はなし)

リ 株式移転
【なし】

ヌ 合併
吸収合併で存続会社となる場合において
【合併による資産の増加額が最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該合併の予定日の属する事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該合併による売上高の増加額が最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれる場合】
【発行済株式又は持分の全部を所有する子会社との合併】
(なお、新設合併、吸収合併で消滅会社となる場合はなし)

ル 会社の分割
分割会社の場合
【最近事業年度の末日における当該分割に係る資産の帳簿価額が同日における純資産額の100分の30未満であり、かつ、当該分割の予定日の属する事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該分割による売上高の減少額が最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれる場合】
承継会社の場合
【当該分割による資産の増加額が最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該分割の予定日の属する事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該分割による売上高の増加額が最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれる場合】

ヲ 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
譲渡会社の場合
【最近事業年度の末日における当該事業の譲渡に係る資産の帳簿価額が同日における純資産額の100分の30未満であり、かつ、当該事業の譲渡の予定日の属する事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該事業の譲渡による売上高の減少額が最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれる場合】
譲受会社の場合
【当該事業の譲受けによる資産の増加額が最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該事業の譲受けの予定日の属する事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該事業の譲受けによる売上高の増加額が最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれる場合、及び
発行済株式又は持分の全部を所有する子会社からの事業の全部又は一部の譲受け】

ワ 解散(合併による解散を除く。)
【なし】

カ 新製品又は新技術の企業化
【新製品の販売又は新技術を利用する事業の開始予定日の属する事業年度開始の日から3年以内に開始する各事業年度においていずれも当該新製品又は新技術の企業化による売上高の増加額が最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該新製品の販売又は新技術を利用する事業の開始のために特別に支出する額の合計額が最近事業年度の末日における固定資産の帳簿価額の100分の10に相当する額未満であると見込まれること。】

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