インサイダー取引規制その12(重要事実)
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実
会社関係者等のインサイダー取引規制における業務等に関する重要事実とは、金商法166条2項各号に定められた事実で、当該会社と子会社について、それぞれ以下の4種類の事実(合計8種類)が規定されています。
このうち、決定事実と発生事実については、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準(軽微基準)に該当するものは除かれます。平成19年3月のコマツに関する課徴金納付命令に関して問題となった子会社の解散について軽微基準が設けられていなかった点については、平成20年の金商法改正において軽微基準が設けられています。軽微基準は、子会社の解散によるグループの資産の減少額が最近事業年度末日における純資産額の30%相当額未満と見込まれ、かつ、当該解散の予定日の属するグループの事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散によるグループの売上高の減少額が最近事業年度の売上高の10%相当額未満と見込まれること、とされています。
(1)決定事実(166条2項1号)
当該上場会社等の業務執行を決定する機関が166条2項1号に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと
が重要事実となります。
(A)業務執行を決定する機関
取締役会などの会社法所定の機関に限らず、実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であれば足りると解されています(日本織物加工事件最高裁判決、最高判平成11年6月10日、資料版商事法務183号60頁)。経営会議、常務会、役員ミーティング、役員会、社長、社長と他の役員、社長と他の役員の合議、会長等が該当しうると考えられます。判例や課徴金事例においても、決定事実については、取締役会決議がなされる以前に実質的な意思決定機関において決定がなされていると認定されている例がほとんどです。取締役会決議が必要な事項についての適時開示は、決議後になされますが、重要事実は、取締役会決議以前に発生していることになります。
(B)…についての決定をしたこと
それ自体の決定のみならず、それに向けた作業等を会社の業務として行うことを決定した場合も含まれます(日本織物加工事件最高裁判決)。
業務執行決定機関において、当該事項の実現を意図して行ったことは必要ですが、必ずしも当該事項が確実に実行されるとの予測が成り立つことは必要ないものと解されています(日本織物加工事件最高裁判決)。
村上ファンド事件地裁判決(東京地判平成19年7月19日)(167条違反の事案)は、実現可能性が全くない場合を除けば、あれば足り、(可能性の)高低は問題とならないとしていましたが、東京高裁は、決定はある程度の具体性を持ち、その実現を真摯に意図しているものでなければならないから、そのためには、その決定にはそれ相応の実現可能性が必要であるとしています(東京高判平成21年2月3日)。
(C)決定の有効性
法律上の瑕疵があり無効となる場合でも、投資者の投資判断に影響を及ぼすものであれば、決定に該当します。また、事後的に変更・取消・撤回が行われても、その前にインサイダー取引が行われていた場合には成否に影響しないと考えられています。
(D)中止決定について
中止決定については、「当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと」とされており、決定が公表(166条4項)されたものに限定されています。
http://igi.jp/counsel.html
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会社関係者等のインサイダー取引規制における業務等に関する重要事実とは、金商法166条2項各号に定められた事実で、当該会社と子会社について、それぞれ以下の4種類の事実(合計8種類)が規定されています。
(1)決定事実
(2)発生事実
(3)決算情報
(4)バスケット条項
このうち、決定事実と発生事実については、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準(軽微基準)に該当するものは除かれます。平成19年3月のコマツに関する課徴金納付命令に関して問題となった子会社の解散について軽微基準が設けられていなかった点については、平成20年の金商法改正において軽微基準が設けられています。軽微基準は、子会社の解散によるグループの資産の減少額が最近事業年度末日における純資産額の30%相当額未満と見込まれ、かつ、当該解散の予定日の属するグループの事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散によるグループの売上高の減少額が最近事業年度の売上高の10%相当額未満と見込まれること、とされています。
子会社の解散に関する軽微基準(新設)
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令
(子会社の機関決定に係る重要事実の軽微基準)
52条1項
5の2.法第166条第2項第5号ヘに掲げる事項 解散(合併による解散を除く。以下この号及び次項第5号の2において同じ。)による当該上場会社等の属する企業集団の資産の減少額が当該企業集団の最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該解散の予定日の属する当該企業集団の事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散による当該企業集団の売上高の減少額が当該企業集団の最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれること。
52条2項(子会社連動株式の場合)
5の2.法第166条第2項第5号ヘに掲げる事項 解散による当該連動子会社の資産の減少額が当該連動子会社の最近事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、かつ、当該解散の予定日の属する当該連動子会社の事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散による当該連動子会社の売上高の減少額が当該連動子会社の最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれること。
(1)決定事実(166条2項1号)
当該上場会社等の業務執行を決定する機関が166条2項1号に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと
が重要事実となります。
(A)業務執行を決定する機関
取締役会などの会社法所定の機関に限らず、実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であれば足りると解されています(日本織物加工事件最高裁判決、最高判平成11年6月10日、資料版商事法務183号60頁)。経営会議、常務会、役員ミーティング、役員会、社長、社長と他の役員、社長と他の役員の合議、会長等が該当しうると考えられます。判例や課徴金事例においても、決定事実については、取締役会決議がなされる以前に実質的な意思決定機関において決定がなされていると認定されている例がほとんどです。取締役会決議が必要な事項についての適時開示は、決議後になされますが、重要事実は、取締役会決議以前に発生していることになります。
(B)…についての決定をしたこと
それ自体の決定のみならず、それに向けた作業等を会社の業務として行うことを決定した場合も含まれます(日本織物加工事件最高裁判決)。
業務執行決定機関において、当該事項の実現を意図して行ったことは必要ですが、必ずしも当該事項が確実に実行されるとの予測が成り立つことは必要ないものと解されています(日本織物加工事件最高裁判決)。
村上ファンド事件地裁判決(東京地判平成19年7月19日)(167条違反の事案)は、実現可能性が全くない場合を除けば、あれば足り、(可能性の)高低は問題とならないとしていましたが、東京高裁は、決定はある程度の具体性を持ち、その実現を真摯に意図しているものでなければならないから、そのためには、その決定にはそれ相応の実現可能性が必要であるとしています(東京高判平成21年2月3日)。
(C)決定の有効性
法律上の瑕疵があり無効となる場合でも、投資者の投資判断に影響を及ぼすものであれば、決定に該当します。また、事後的に変更・取消・撤回が行われても、その前にインサイダー取引が行われていた場合には成否に影響しないと考えられています。
(D)中止決定について
中止決定については、「当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと」とされており、決定が公表(166条4項)されたものに限定されています。
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