インサイダー取引規制その11(会社関係者等)
7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等(続きその2)
(2)元会社関係者(166条1項後段)
当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を166条1項各号に定めるところにより知った会社関係者であって、当該各号に掲げる会社関係者でなくなった後1年以内のものもインサイダー取引規制の対象となります。元会社関係者となるのは、会社関係者であったときに職務に関し知った場合であり、会社関係者でなくなった後に知った場合には情報受領者の問題となります。元会社関係者となる期間が1年とされているのは、1年あれば継続開示により公表されると考えられたためとされています(注5)。
(注5)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年47頁
(3)情報受領者(166条3項)
(A)第一次情報受領者(前段)
会社関係者・元会社関係者から、当該会社関係者等が第1項各号に定めるところにより知った同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者は、インサイダー取引規制の対象となります。
会社関係者・元会社関係者から情報の伝達を受けたもの、すなわち、第一次情報受領者に限られますが、第一次情報受領者か否かは実質的に検討されます。裁判例上、他人を介して重要事実の伝達を受けた者も情報受領者に該当するとされた例もあります(日新汽船事件、東京簡判平成2年9月26日、資料版商事法務81号35頁)。
また、会社関係者から情報を伝達された者であればよいので、その時点でその事実を知っていてもこれに該当しうることになります。
ただし、会社関係者が伝達する意思(認識)がない場合には該当しないと考えられていますので、会社関係者の話を偶然立ち聞きしたものや、会社関係者の落し物を拾得したものなどは、伝達する意思がないので、インサイダー取引には該当しないことになります。
伝達の対象となる情報は、重要事実の一部であってもかまわないと解されます(注6)。
(注6)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年123頁
(B)職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知ったもの(後段)
職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知ったものも、第一次情報受領者と同様にインサイダー取引規制の対象となります。平成10年の証取法改正で追加された条項です。情報受領者の属する法人への派遣社員の事例として、大日本土木事件があります(名古屋地判平成16年5月27日、資料版商事法務244号206頁)。また、NHK職員によるインサイダー取引にかかる課徴金納付命令の事例も、NHKの記者が職務上伝達を受けた重要事実を、その職務に関し知った他のNHKの職員によるインサイダー取引が問題となった事例です(注7)。
(注7)以下の3つの事例がNHK職員によるインサイダー取引の課徴金納付命令のケースです。
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1a.html
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1b.html
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1c.html
なお、http://blog.igi.jp/?eid=698742参照。
(C)166条1項各号に定めるもの
情報受領者についても、166条1項「各号に掲げる者であって、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知ったものを除く」と規定されているので(166条3項)、第1項に該当する者は第3項には該当しないことになります。
(4)上場会社等
会社関係者は、上場会社等の役員等など、上場会社等と一定の関係を有する者ですが、「上場会社等」の定義は、163条1項の規定が適用されます。
「上場会社等」とは、第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(政令で定めるものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券又は取扱有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券の発行者をいいます。除外される有価証券については、金融商品取引法施行令27条、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令25条、その他政令で定める有価証券については金融商品取引法施行令27条の2が規定しています。
http://igi.jp/counsel.html
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(2)元会社関係者(166条1項後段)
当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を166条1項各号に定めるところにより知った会社関係者であって、当該各号に掲げる会社関係者でなくなった後1年以内のものもインサイダー取引規制の対象となります。元会社関係者となるのは、会社関係者であったときに職務に関し知った場合であり、会社関係者でなくなった後に知った場合には情報受領者の問題となります。元会社関係者となる期間が1年とされているのは、1年あれば継続開示により公表されると考えられたためとされています(注5)。
(注5)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年47頁
(3)情報受領者(166条3項)
(A)第一次情報受領者(前段)
会社関係者・元会社関係者から、当該会社関係者等が第1項各号に定めるところにより知った同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者は、インサイダー取引規制の対象となります。
会社関係者・元会社関係者から情報の伝達を受けたもの、すなわち、第一次情報受領者に限られますが、第一次情報受領者か否かは実質的に検討されます。裁判例上、他人を介して重要事実の伝達を受けた者も情報受領者に該当するとされた例もあります(日新汽船事件、東京簡判平成2年9月26日、資料版商事法務81号35頁)。
また、会社関係者から情報を伝達された者であればよいので、その時点でその事実を知っていてもこれに該当しうることになります。
ただし、会社関係者が伝達する意思(認識)がない場合には該当しないと考えられていますので、会社関係者の話を偶然立ち聞きしたものや、会社関係者の落し物を拾得したものなどは、伝達する意思がないので、インサイダー取引には該当しないことになります。
伝達の対象となる情報は、重要事実の一部であってもかまわないと解されます(注6)。
(注6)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年123頁
(B)職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知ったもの(後段)
職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知ったものも、第一次情報受領者と同様にインサイダー取引規制の対象となります。平成10年の証取法改正で追加された条項です。情報受領者の属する法人への派遣社員の事例として、大日本土木事件があります(名古屋地判平成16年5月27日、資料版商事法務244号206頁)。また、NHK職員によるインサイダー取引にかかる課徴金納付命令の事例も、NHKの記者が職務上伝達を受けた重要事実を、その職務に関し知った他のNHKの職員によるインサイダー取引が問題となった事例です(注7)。
(注7)以下の3つの事例がNHK職員によるインサイダー取引の課徴金納付命令のケースです。
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1a.html
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1b.html
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080319-1c.html
なお、http://blog.igi.jp/?eid=698742参照。
(C)166条1項各号に定めるもの
情報受領者についても、166条1項「各号に掲げる者であって、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知ったものを除く」と規定されているので(166条3項)、第1項に該当する者は第3項には該当しないことになります。
(4)上場会社等
会社関係者は、上場会社等の役員等など、上場会社等と一定の関係を有する者ですが、「上場会社等」の定義は、163条1項の規定が適用されます。
「上場会社等」とは、第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(政令で定めるものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券又は取扱有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券の発行者をいいます。除外される有価証券については、金融商品取引法施行令27条、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令25条、その他政令で定める有価証券については金融商品取引法施行令27条の2が規定しています。
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金融商品取引法2条1項(抜粋)
第2条 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。
5.社債券(相互会社の社債券を含む。以下同じ。)
7.協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成5年法律第44号。以下「優先出資法」という。)に規定する優先出資証券
9.株券又は新株予約権証券
金融商品取引法施行令
(上場会社等の有価証券から除くもの)
第27条 法第163条第1項に規定する有価証券から除くものとして政令で定めるものは、法第2条第1項第5号に掲げる有価証券のうち当該有価証券の発行により得られる金銭をもって特定資産(資産流動化法第2条第1項に規定する特定資産をいう。以下この条において同じ。)を取得し、当該特定資産の管理及び処分により得られる金銭をもつて当該有価証券の債務が履行されることとなる有価証券(特定社債券を除く。)として内閣府令で定めるものとする。
(その発行者が上場会社等となる有価証券の範囲)
第27条の2 法第163条第1項に規定する法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(前条に規定するものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券又は取扱有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券は、次に掲げるものとする。
1.法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(前条に規定するものを除く。以下この条において同じ。)で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
2.法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券(前号に掲げるものを除く。)を受託有価証券とする有価証券信託受益証券で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
3.外国の者の発行する証券又は証書のうち法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券の性質を有するもので、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
4.外国の者の発行する証券又は証書のうち法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券の性質を有するもの(前号に掲げるものを除く。)を受託有価証券とする有価証券信託受益証券で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
5.外国の者の発行する証券又は証書のうち法第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券の性質を有するもの(前2号に掲げるものを除く。)の預託を受けた者が当該証券又は証書の発行された国以外の国において発行する証券又は証書で、当該預託を受けた証券又は証書に係る権利を表示するもののうち、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令
(適用除外有価証券)
第25条 令第27条に規定する内閣府令で定めるものは、法第2条第1項第5号又は第15号に掲げる有価証券(資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第10項に規定する特定約束手形を除く。)の性質を有するもののうち、次に掲げる要件をいずれも満たすものとする。
1.当該有価証券の発行を目的として設立又は運営される法人(次号において「特別目的法人」という。)に直接又は間接に所有者から譲渡(取得を含む。)される金銭債権その他の資産(次号において「譲渡資産」という。)が存在すること。
2.特別目的法人が当該有価証券を発行し、当該有価証券(当該有価証券の借換えのために発行されるものを含む。)上の債務の履行について譲渡資産の管理、運用又は処分を行うことにより得られる金銭を当てること。
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