インサイダー取引規制その9(会社関係者等)
インサイダー取引規制は、会社関係者等のインサイダー取引規制と、公開買付者等関係者のインサイダー取引規制にわかれます。まず会社関係者等のインサイダー取引規制の要件から解説します。
7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等
会社関係者等のインサイダー取引規制の対象者は、
の3つに分かれます。これらの者が、その属性に応じて、未公表の重要事実を、その職務に関し知ったとき等にインサイダー取引規制の対象となります。
(1)会社関係者(166条1項前段)
会社関係者は、重要事実を、その者の属性に応じて、その者の職務に関し知ったとき等に、インサイダー取引規制の対象となります。
会社関係者は、上場会社等の
の5つに分かれます(166条1項1号から5号)
(A)役員等【その者の職務に関し知ったとき】(166条1項1号)
役員等とは、当該上場会社等(親会社及び子会社を含む)の
を3つに分かれます。
(a)役員
金商法21条1項2号は役員を取締役、会計参与、監査役若しくは執行役又はこれらに準ずる者と定義していますが、163条から167条は定義が適用される規定から除かれており、他に定義は設けられていませんので、役員の意義は解釈に委ねられていることになります。定義規定が設けられていないのは、この用語が使用される条文では多種多様な法人が対象となるからとされています(注1)。
この点については、株式会社では、取締役、会計参与、監査役、執行役(法令上の言わば正式な役員)がこれに該当し、執行役員、顧問、相談役などの事実上役員的な地位にあるものはこれに含まれないと解されています。ただし、執行役員、顧問、相談役などは「使用人その他の従業者」に該当すると考えられますので、いずれにせよ会社関係者等に該当することになります。
(注1)服部秀一「インサイダー取引規制のすべて」(商事法務)2001年24〜25頁
(b)代理人
民法99条1項は、代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる、と定めています。したがって、代理人とは、本人のためにすることを示して意思表示をなし、その効果を本人に対して生じさせる権限を有する者ということになります。本人から権限を付与された任意代理人と、法律上権限を付与されている法定代理人があります。インサイダー取引規制の対象となるのは、上場会社等の代理人ですので、上場会社等(親会社及び子会社を含む)の業務に関する代理権を付与された者となり、支配人(会社法10条、商法21条)や契約交渉などの代理人などが含まれることになります。
(c)使用人その他の従業者
使用人その他の従業者は、実際に会社の業務に従事するものであれば足り、雇用契約等の契約の有無や名称などは問わず、該当しうると解されています。また、業務に従事するのが継続的であるか一時的であるかも問いません。したがって、通常の従業員のほか、出向社員、アルバイト、派遣社員、事実上その会社の業務を手伝っていた者なども含まれることになります。出向社員については、出向先については、使用人その他の従業者(1号)、または、出向に関する契約を出向先と締結している出向元(契約締結者)の役員等(4号)として会社関係者に該当しうることになる(この点は派遣社員も同様です)と同時に、出向元との関係でも使用人その他の従業者として会社関係者に該当しうることになります。
(d)職務に関し知ったとき
その者の職務に関し知ったときの意義については諸説ありますが、職務行為自体により知った場合のほか、職務と密接に関連する行為により知った場合を含むとする見解が有力です(注2)。
そのほかには、職務行為自体により知った場合のほか、職務と密接に関連する行為により知った場合を含むが、その者の職務が当該重要事実を知りうるようなものでなければならないとする見解(注3)、有価証券の投資判断に影響を及ぼすべき特別な情報に自ら関与し、または接近しうる特別な立場にある者が、その特別な立場ゆえに重要な情報を知ったときとする見解(注4)、その職務の実行に関して知る必要のあるまたは知る立場にある情報を知った場合とする見解(注5)、などがあります。
職務は、その者の地位に応じて取り扱うべきすべての職務を含み、現に担当している職務に限られません。また、職務に関し知った場合であれば、重要事実を知った方法は問いません。上記の見解のいずれを採用するのかについては、判例上決着がついているわけではありませんが、インサイダー取引防止の観点から広く解しておくのが妥当と思われます。
(注2)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年36頁ほか
(注3)東京弁護士会会社法部会編「インサイダー取引規制ガイドライン」商事法務研究会1989年25頁
(注4)服部秀一「インサイダー取引のすべて」(商事法務研究会)2001年32頁
(注5)野村證券編「事例インサイダー取引〔新版〕」(金融財政事情研究会)1990年130頁
http://igi.jp/text.html(金融商品取引法情報)
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インサイダー取引規制その9
インサイダー取引規制その10
インサイダー取引規制その11
7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等
会社関係者等のインサイダー取引規制の対象者は、
(1)会社関係者
(2)元会社関係者
(3)情報受領者
の3つに分かれます。これらの者が、その属性に応じて、未公表の重要事実を、その職務に関し知ったとき等にインサイダー取引規制の対象となります。
(1)会社関係者(166条1項前段)
会社関係者は、重要事実を、その者の属性に応じて、その者の職務に関し知ったとき等に、インサイダー取引規制の対象となります。
会社関係者は、上場会社等の
(A)役員等【職務に関し知ったとき】
(B)会計帳簿閲覧等請求権を有する株主【権利行使に関し知ったとき】
(C)法令に基づく権限を有する者【権限行使に関し知ったとき】
(D)契約締結者・契約締結交渉中の者【契約の締結・交渉・履行に関し知ったとき】
(E)(B)または(D)と同一法人の他の役職員【職務に関し知ったとき】
の5つに分かれます(166条1項1号から5号)
(A)役員等【その者の職務に関し知ったとき】(166条1項1号)
役員等とは、当該上場会社等(親会社及び子会社を含む)の
(a)役員(会計参与が法人であるときは、その社員)
(b)代理人
(c)使用人その他の従業者
を3つに分かれます。
(a)役員
金商法21条1項2号は役員を取締役、会計参与、監査役若しくは執行役又はこれらに準ずる者と定義していますが、163条から167条は定義が適用される規定から除かれており、他に定義は設けられていませんので、役員の意義は解釈に委ねられていることになります。定義規定が設けられていないのは、この用語が使用される条文では多種多様な法人が対象となるからとされています(注1)。
この点については、株式会社では、取締役、会計参与、監査役、執行役(法令上の言わば正式な役員)がこれに該当し、執行役員、顧問、相談役などの事実上役員的な地位にあるものはこれに含まれないと解されています。ただし、執行役員、顧問、相談役などは「使用人その他の従業者」に該当すると考えられますので、いずれにせよ会社関係者等に該当することになります。
(注1)服部秀一「インサイダー取引規制のすべて」(商事法務)2001年24〜25頁
(b)代理人
民法99条1項は、代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる、と定めています。したがって、代理人とは、本人のためにすることを示して意思表示をなし、その効果を本人に対して生じさせる権限を有する者ということになります。本人から権限を付与された任意代理人と、法律上権限を付与されている法定代理人があります。インサイダー取引規制の対象となるのは、上場会社等の代理人ですので、上場会社等(親会社及び子会社を含む)の業務に関する代理権を付与された者となり、支配人(会社法10条、商法21条)や契約交渉などの代理人などが含まれることになります。
(c)使用人その他の従業者
使用人その他の従業者は、実際に会社の業務に従事するものであれば足り、雇用契約等の契約の有無や名称などは問わず、該当しうると解されています。また、業務に従事するのが継続的であるか一時的であるかも問いません。したがって、通常の従業員のほか、出向社員、アルバイト、派遣社員、事実上その会社の業務を手伝っていた者なども含まれることになります。出向社員については、出向先については、使用人その他の従業者(1号)、または、出向に関する契約を出向先と締結している出向元(契約締結者)の役員等(4号)として会社関係者に該当しうることになる(この点は派遣社員も同様です)と同時に、出向元との関係でも使用人その他の従業者として会社関係者に該当しうることになります。
(d)職務に関し知ったとき
その者の職務に関し知ったときの意義については諸説ありますが、職務行為自体により知った場合のほか、職務と密接に関連する行為により知った場合を含むとする見解が有力です(注2)。
そのほかには、職務行為自体により知った場合のほか、職務と密接に関連する行為により知った場合を含むが、その者の職務が当該重要事実を知りうるようなものでなければならないとする見解(注3)、有価証券の投資判断に影響を及ぼすべき特別な情報に自ら関与し、または接近しうる特別な立場にある者が、その特別な立場ゆえに重要な情報を知ったときとする見解(注4)、その職務の実行に関して知る必要のあるまたは知る立場にある情報を知った場合とする見解(注5)、などがあります。
職務は、その者の地位に応じて取り扱うべきすべての職務を含み、現に担当している職務に限られません。また、職務に関し知った場合であれば、重要事実を知った方法は問いません。上記の見解のいずれを採用するのかについては、判例上決着がついているわけではありませんが、インサイダー取引防止の観点から広く解しておくのが妥当と思われます。
(注2)横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)1989年36頁ほか
(注3)東京弁護士会会社法部会編「インサイダー取引規制ガイドライン」商事法務研究会1989年25頁
(注4)服部秀一「インサイダー取引のすべて」(商事法務研究会)2001年32頁
(注5)野村證券編「事例インサイダー取引〔新版〕」(金融財政事情研究会)1990年130頁
http://igi.jp/text.html(金融商品取引法情報)
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