インサイダー取引規制その6(課徴金)
6.インサイダー取引規制違反の効果その5 課徴金
課徴金制度は、
ものとして導入されました。
金融商品取引法上の課徴金制度については、別エントリー(注1)で解説していますが、ここではインサイダー取引規制違反の場合に限定して解説します。課徴金納付命令に関する手続き等については、課徴金制度のエントリーをご参照下さい。
(注1)http://blog.igi.jp/?cid=35940
(1)インサイダー取引規制違反の課徴金制度
インサイダー取引規制違反の課徴金納付命令は、会社関係者等のインサイダー取引規制(金商法166条1項もしくは3項)または公開買付関係者等のインサイダー取引規制(金商法167条1項もしくは3項)の規定に違反して、自己の計算で有価証券の売買等をした者に対して行われます。
原則として自己の計算で売買等を行った者が課徴金の対象となりますが、自己の計算か否かは、名義ではなく実質的に判断されるので、他人名義を借用して取引を行った者や、他人の行為を支配しており実質的にその者の行為と認められる場合には、自己の計算で売買等を行った者として、その者が課徴金の対象とされる可能性があります。他方、自己の計算で売買等を行った者の他に、教唆者等がいた場合には、教唆者等は課徴金の対象とはならないことになります。
ただし、平成20年の金商法改正により、違反者が、自己と密接・特殊な関係にある者(密接・特殊関係者)の計算において違反行為をした場合には、自己の計算において違反行為をしたものとみなして、その者に対して課徴金が課せられることになっています。密接・特殊関係者の範囲は
です(金商法175条10項・11項)が、詳細は金融商品取引法第6章の2の規定による課徴金に関する内閣府令(課徴金府令)1条の23に規定されています。
また、役員等が、166条1項または3項に違反して、上場会社等の計算において違反行為を行った場合には、当該上場会社等に対して課徴金が課せられることになります(175条9項)。
(追記)
上場会社等の計算において違反行為を行った場合というのは、自社株買いの場合であり、コマツ及び大塚家具に対する各課徴金納付命令の事例を受けて「うっかりインサイダー」として問題となった事例です。報道されているところによれば、小松製作所の執行役員は、当該子会社の解散が重要事実に該当しないと思い込んでいたとのことであり、また、大塚家具は、取締役会の決議があってはじめて重要事実となると考えていたようですが、インサイダー取引規制違反の成立要件としては、ある事実が重要事実に該当することを認識している必要はなく、また、公表された予想値と新たに算出された予想との間に一定の差が生じたことが重要事実であり、予想値の修正が重要事実に該当するためには必ずしも取締役会の決議は必要ではありません。いずれも、重要事実を知りつつも、それを利用して利益を得る目的もなく、また、インサイダー取引として違法な行為に該当することも知らずに、自社株買いを行ったものであったため「うっかりインサイダー」となって課徴金納付命令を受けた事例です。検察官が起訴するか否かの裁量を有する(刑事訴訟法248条)刑事罰の場合と異なり、前述のとおり、課徴金制度においては、行政庁には課徴金を課すか否かの裁量は認められないため、課徴金が課せられています。「うっかりインサイダー」を防止するには、インサイダー取引規制について正しく理解するよりほかないですが、特に自社株買いを行う場合には、常にインサイダー取引となるリスクがあるため、未公表の重要事実がないことを慎重に確認した上で行う必要があります。
http://igi.jp/text.html
【関連記事】
インサイダー取引規制その1
インサイダー取引規制その2
インサイダー取引規制その3
インサイダー取引規制その4
インサイダー取引規制その5
インサイダー取引規制その6
インサイダー取引規制その7
インサイダー取引規制その8
インサイダー取引規制その9
インサイダー取引規制その10
インサイダー取引規制その11
課徴金制度は、
証券市場への信頼を害する違法行為又は公認会計士・監査法人による虚偽証明)に対して、行政として適切な対応を行う観点から、規制の実効性確保のための新たな手段として、平成17年4月(公認会計士法については20年4月)から、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す
(http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/02.html)
ものとして導入されました。
金融商品取引法上の課徴金制度については、別エントリー(注1)で解説していますが、ここではインサイダー取引規制違反の場合に限定して解説します。課徴金納付命令に関する手続き等については、課徴金制度のエントリーをご参照下さい。
(注1)http://blog.igi.jp/?cid=35940
(1)インサイダー取引規制違反の課徴金制度
インサイダー取引規制違反の課徴金納付命令は、会社関係者等のインサイダー取引規制(金商法166条1項もしくは3項)または公開買付関係者等のインサイダー取引規制(金商法167条1項もしくは3項)の規定に違反して、自己の計算で有価証券の売買等をした者に対して行われます。
原則として自己の計算で売買等を行った者が課徴金の対象となりますが、自己の計算か否かは、名義ではなく実質的に判断されるので、他人名義を借用して取引を行った者や、他人の行為を支配しており実質的にその者の行為と認められる場合には、自己の計算で売買等を行った者として、その者が課徴金の対象とされる可能性があります。他方、自己の計算で売買等を行った者の他に、教唆者等がいた場合には、教唆者等は課徴金の対象とはならないことになります。
ただし、平成20年の金商法改正により、違反者が、自己と密接・特殊な関係にある者(密接・特殊関係者)の計算において違反行為をした場合には、自己の計算において違反行為をしたものとみなして、その者に対して課徴金が課せられることになっています。密接・特殊関係者の範囲は
(1)違反者がその総株主等の議決権の過半数を保有している会社その他の当該者と密接な関係を有する者として内閣府令で定める者【密接関係者】
(2)違反者と生計を一にする者その他の当該売買等をした者と特殊の関係にある者として内閣府令で定める者【特殊関係者】
です(金商法175条10項・11項)が、詳細は金融商品取引法第6章の2の規定による課徴金に関する内閣府令(課徴金府令)1条の23に規定されています。
【密接・特殊関係者】
(1)密接関係者
(A)違反者の親会社
(B)違反者の子会社
(C)違反者と同一の親会社をもつ会社等
(D)違反者(個人に限る)の同族会社(法人税法第2条第10号に規定する同族会社をいい、違反者が支配していないことが明らかであると認められる会社を除く)
(2)特殊関係者
(A)違反者(個人に限る)の親族
(B)違反者(個人に限る)と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(C)違反者の役員等
(D)(A)から(C)以外の者で違反者(個人に限る)から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
(E)(B)から(D)に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
また、役員等が、166条1項または3項に違反して、上場会社等の計算において違反行為を行った場合には、当該上場会社等に対して課徴金が課せられることになります(175条9項)。
(追記)
上場会社等の計算において違反行為を行った場合というのは、自社株買いの場合であり、コマツ及び大塚家具に対する各課徴金納付命令の事例を受けて「うっかりインサイダー」として問題となった事例です。報道されているところによれば、小松製作所の執行役員は、当該子会社の解散が重要事実に該当しないと思い込んでいたとのことであり、また、大塚家具は、取締役会の決議があってはじめて重要事実となると考えていたようですが、インサイダー取引規制違反の成立要件としては、ある事実が重要事実に該当することを認識している必要はなく、また、公表された予想値と新たに算出された予想との間に一定の差が生じたことが重要事実であり、予想値の修正が重要事実に該当するためには必ずしも取締役会の決議は必要ではありません。いずれも、重要事実を知りつつも、それを利用して利益を得る目的もなく、また、インサイダー取引として違法な行為に該当することも知らずに、自社株買いを行ったものであったため「うっかりインサイダー」となって課徴金納付命令を受けた事例です。検察官が起訴するか否かの裁量を有する(刑事訴訟法248条)刑事罰の場合と異なり、前述のとおり、課徴金制度においては、行政庁には課徴金を課すか否かの裁量は認められないため、課徴金が課せられています。「うっかりインサイダー」を防止するには、インサイダー取引規制について正しく理解するよりほかないですが、特に自社株買いを行う場合には、常にインサイダー取引となるリスクがあるため、未公表の重要事実がないことを慎重に確認した上で行う必要があります。
コマツに対する課徴金納付命令の概要
http://www.fsa.go.jp/news/18/syouken/20070330-7.html
同社の執行役員は、同社の子会社のオランダコマツファイナンス(有)が解散を行うことについての決定した事実を、その職務に関して知り、当該事実が公表される平成17年7月13日以前の同月4日から同月13日の間に、(株)小松製作所の計算において、株券131万6000株を11億7746万1000円で買い付けたものである。
違反行為者 同社
重要事実 子会社の解散(子会社の決定事実)
課徴金額 4378万円
大塚家具に対する課徴金納付命令の概要
http://www.fsa.go.jp/news/18/syouken/20070529-1.html
同社の役員は、同社が配当予想値の修正を行う事実をその職務に関し知り、当該事実が公表される平成18年2月23日以前の同月10日から同月22日の間に、(株)大塚家具の計算において、株券7万9000株を3億3295万5000円で買い付けたものである。
違反行為者 同社
重要事実 配当予想値の修正(決算情報)
課徴金額 3044万円
http://igi.jp/text.html
【関連記事】
インサイダー取引規制その1
インサイダー取引規制その2
インサイダー取引規制その3
インサイダー取引規制その4
インサイダー取引規制その5
インサイダー取引規制その6
インサイダー取引規制その7
インサイダー取引規制その8
インサイダー取引規制その9
インサイダー取引規制その10
インサイダー取引規制その11
この記事に対するコメント