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インサイダー取引規制その4(民事責任)

5.インサイダー取引規制違反の効果その4 民事責任

インサイダー取引規制違反の民事責任については、金融商品取引法上、特別の規定は設けられていません。インサイダー取引規制導入時の証券取引審議会の「内部者取引の規制のあり方について」(昭和63年2月24日)で、インサイダー取引を行った者の相手方に対する損害賠償について実効性を持ちうる措置を講ずるべきであるが、取引所取引については、原告適格、訴訟手続等について慎重な検討が必要であり、中長期的な課題とされていますが、20年余りを経過した現在までのところ、特別な規定は設けられていません。したがって、民法等の一般法に基づく責任を負うか否かを検討することになります。

(1)インサイダー取引規制違反を行った者の責任

インサイダー取引を行った会社関係者等の民事責任としては、取引の相手方(他の投資家)に対する責任と、インサイダー取引の対象となった株券等の発行会社である上場会社等に対する責任が考えられます。取引の相手方(他の投資家)に対する責任については、取引所取引(市場取引)と相対取引を分けて考える必要があります。

(A)取引所取引(市場取引)

まず、取引の相手方(他の投資家)に対する責任については、まず、取引所取引(市場取引)によってインサイダー取引が行われた場合には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)ないし不当利得返還請求(民法703条〜)を検討することになりますが、この場合そもそも相手方を特定することが非常に困難です。この点について、東京地判平成3年10月29日(金融法務事情1321号23頁)は、不法行為の成立要件である因果関係について、
証券取引所における株式取引では、個々の顧客の委託注文は、証券会社を通じて証券取引所に集約され、値段及び時間を基準にして集計された売り注文と買い注文が集団的に結び付けられて注文が成立する。したがって、この場合、被告の株式売却と原告の株式買受けとの間に売買が成立したというためには、まず、集団競争売買の中で、被告の売り注文と原告の買い注文とが、現実に結び付けられたことが、原告によって主張立証されなければならない。

としていますが、かかる立証はきわめて困難です。

また、仮に因果関係が認められる場合であっても、インサイダー取引を行った者が相手方に自分が未公表の重要事実を知っていることを告知しないで取引しなかったことが違法である必要があり、さらに、損害についても、株券等の価格はその時々の各種事情により変化しており、インサイダー取引による損害を立証することも簡単なことではありません。

不当利得返還請求については、同様に相手方の特定(因果関係)の問題があるほか、法律上の原因についても、インサイダー取引は売買等の原因に基づいてなされるものであるため、通常は法律上の原因が認められるものと考えられます。

したがって、インサイダー取引を行った会社関係者等に対し、取引の相手方(他の投資家)が損害賠償等を請求することには非常に困難が伴うことになりますが、そのために前述の証券取引審議会の「内部者取引の規制のあり方について」(昭和63年2月24日)は、実効性を持ちうる措置を講ずるべきであるとしたものと考えられます。

(B)相対取引

次に、相対取引の場合には、相手方の特定という問題は当然ありません。この場合、債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)、不法行為に基づく損害賠償請求ないし不当利得返還請求を行うことが考えられますが、インサイダー取引を行った者に、信義則上、相手方に自分が未公表の重要事実を知っていることを告知する義務を負う場合には、義務違反(債務不履行)が認められ、あるいは、告知を行ったことにより違法となり、債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求が認められうると考えられます。

かかる告知義務が認められる場合としては、例えば、売主が上場企業等の契約締結者である証券会社である場合に、未公表の重要事実等を知りながら、一般の個人投資家に売却したケースが挙げられています(服部秀一「インサイダー取引のすべて」(商事法務研究会)2001年314頁(注2))。

また、不当利得返還請求については、法律上の原因の有無が問題となりますが、インサイダー取引違反の取引も当然には無効とならないものの、反社会性が強く公序良俗違反の場合には取引は無効になるので、法律上の原因がなく、相手方は不当利得返還請求もできるものとされています(上記服部316頁(注6))。

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