インサイダー取引規制その2(刑事罰)
3.インサイダー取引規制違反の効果その2 刑事罰
(1)法定刑・両罰規定
インサイダー取引規制に違反した者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処せられ、または、これらが併科されることになります(金商法197条の2第13号)。また、法人等の役職員等が、その法人の業務等に関し違反をしたときは、その行為者に加えて、その法人等に対しても5億円以下の罰金が科されます(金商法207条)。
インサイダー取引規制違反の法定刑は、規制が導入された同時は6月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、または、これらが併科されるというものでしたが、その後罰則が強化されており、平成18年改正により、現在の内容の法定刑となっています(18年改正前は3年以下の懲役・300万円以下の罰金・併科)。
金商法157条違反の場合(現在は10年以下の懲役・1000万円以下の罰金・併科)に比べて、法定刑が軽くなっていますが、この点については、規制導入当時の立法担当者は、インサイダー取引規制は、証券市場の公正性と健全性に対する投資家の信頼を確保するという観点から、157条が規定するような取引の実質的な不正という点にまでは立ち入らず、いわば形式的に、発行会社の役員等の一定の立場にある者が、一定の事実を知った場合について、これが公表される前に一定の有価証券の取引を行うことそれ自体を処罰するものであることを考慮したもの、としています(横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)平成元年17頁、203頁)。取引の実質的不正に立ち入らず、形式的に、一定の場合の取引を行うことそれ自体を処罰する、というのは、インサイダー取引規制の特徴を端的にあらわしています。
(2)罪数
罪数については、1回の取引ごとに犯罪が成立し、複数回の取引が行われた場合には、併合罪(刑法45条前段)となるのが原則と考えられています。併合罪とされた場合には、懲役刑は犯情の重い罪の刑の長期の1.5倍が長期とされ(刑法47条本文、10条3項)、罰金刑については罰金の多額が合計されることになります(刑法48条2項)。
但し、日時・場所の近接性や意思の継続性などから、各取引の間に密接な関係が認められ、全体を1個の行為として評価することが相当である場合には包括一罪となる(1個の犯罪が成立する)ものと考えられます。包括一罪の場合は、上記の法定刑の範囲内で刑が科されることになります。
http://igi.jp/counsel.html
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インサイダー取引規制に違反した者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処せられ、または、これらが併科されることになります(金商法197条の2第13号)。また、法人等の役職員等が、その法人の業務等に関し違反をしたときは、その行為者に加えて、その法人等に対しても5億円以下の罰金が科されます(金商法207条)。
インサイダー取引規制違反の法定刑は、規制が導入された同時は6月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、または、これらが併科されるというものでしたが、その後罰則が強化されており、平成18年改正により、現在の内容の法定刑となっています(18年改正前は3年以下の懲役・300万円以下の罰金・併科)。
金商法157条違反の場合(現在は10年以下の懲役・1000万円以下の罰金・併科)に比べて、法定刑が軽くなっていますが、この点については、規制導入当時の立法担当者は、インサイダー取引規制は、証券市場の公正性と健全性に対する投資家の信頼を確保するという観点から、157条が規定するような取引の実質的な不正という点にまでは立ち入らず、いわば形式的に、発行会社の役員等の一定の立場にある者が、一定の事実を知った場合について、これが公表される前に一定の有価証券の取引を行うことそれ自体を処罰するものであることを考慮したもの、としています(横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)平成元年17頁、203頁)。取引の実質的不正に立ち入らず、形式的に、一定の場合の取引を行うことそれ自体を処罰する、というのは、インサイダー取引規制の特徴を端的にあらわしています。
(2)罪数
罪数については、1回の取引ごとに犯罪が成立し、複数回の取引が行われた場合には、併合罪(刑法45条前段)となるのが原則と考えられています。併合罪とされた場合には、懲役刑は犯情の重い罪の刑の長期の1.5倍が長期とされ(刑法47条本文、10条3項)、罰金刑については罰金の多額が合計されることになります(刑法48条2項)。
但し、日時・場所の近接性や意思の継続性などから、各取引の間に密接な関係が認められ、全体を1個の行為として評価することが相当である場合には包括一罪となる(1個の犯罪が成立する)ものと考えられます。包括一罪の場合は、上記の法定刑の範囲内で刑が科されることになります。
(関連条文:金融商品取引法)
第197条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(略)
13.第166条第1項若しくは第3項又は第167条第1項若しくは第3項の規定に違反した者
第207条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
1.第197条 7億円以下の罰金刑
2.第197条の2(第11号及び第12号を除く。) 5億円以下の罰金刑
3.〜6.(略)
2 前項の規定により第197条又は第197条の2(第11号及び第12号を除く。)の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。
3 第1項の規定により法人でない団体を処罰する場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
第197条 次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(略)
5.第157条、第158条又は第159条の規定に違反した者
2 財産上の利益を得る目的で、前項第5号の罪を犯して有価証券等の相場を変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させ、当該変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させた相場により当該有価証券等に係る有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を行った者は、10年以下の懲役及び3000万円以下の罰金に処する。
(不正行為の禁止)
第157条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
1.有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、不正の手段、計画又は技巧をすること。
2.有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、重要な事項について虚偽の表示があり、又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示が欠けている文書その他の表示を使用して金銭その他の財産を取得すること。
3.有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を誘引する目的をもつて、虚偽の相場を利用すること。
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この記事に対するコメント
インサイダー取引の時効について検索をかけていて、このブログにたどり着きました。
既に時効を迎えているインサイダー取引の扱いについてです。
質問なんですが、時効を迎えている場合、罪には問われないのでしょうか?
また、黙ってた側も罪に問われるのでしょうか?
この数年、ずっと黙っている事が苦痛で悩んでました。
情報提供すべきかどうか?
取引をした本人から、口止めをされてた事、
数年にわたり、いやがらせワン切り電話があった事。
ご本人とは、二度と関わりたくないため、無視をし続けてました。
情報提供することで、こちらの情報が先方に漏れたり、関わらなければならなくなってしまうのか?などの方が怖く、通報したい気持ちがありながら、時効を過ぎてしまいました。
この様な場合、何も言わずにそのままにしておいた方がいいのでしょうか?
ご本人の性格から考えると、インサイダー情報を入手したら、取引をする人です。