blog/igi.jp

legal thinking in a divided/connected world
<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 2009年の新規上場その1 | main | インサイダー取引規制その3(刑事罰) >>

インサイダー取引規制その2(刑事罰)

3.インサイダー取引規制違反の効果その2 刑事罰

(1)法定刑・両罰規定 
インサイダー取引規制に違反した者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処せられ、または、これらが併科されることになります(金商法197条の2第13号)。また、法人等の役職員等が、その法人の業務等に関し違反をしたときは、その行為者に加えて、その法人等に対しても5億円以下の罰金が科されます(金商法207条)。

インサイダー取引規制違反の法定刑は、規制が導入された同時は6月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、または、これらが併科されるというものでしたが、その後罰則が強化されており、平成18年改正により、現在の内容の法定刑となっています(18年改正前は3年以下の懲役・300万円以下の罰金・併科)。

金商法157条違反の場合(現在は10年以下の懲役・1000万円以下の罰金・併科)に比べて、法定刑が軽くなっていますが、この点については、規制導入当時の立法担当者は、インサイダー取引規制は、証券市場の公正性と健全性に対する投資家の信頼を確保するという観点から、157条が規定するような取引の実質的な不正という点にまでは立ち入らず、いわば形式的に、発行会社の役員等の一定の立場にある者が、一定の事実を知った場合について、これが公表される前に一定の有価証券の取引を行うことそれ自体を処罰するものであることを考慮したもの、としています(横畠裕介「逐条解説インサイダー取引規制と罰則」(商事法務研究会)平成元年17頁、203頁)。取引の実質的不正に立ち入らず、形式的に、一定の場合の取引を行うことそれ自体を処罰する、というのは、インサイダー取引規制の特徴を端的にあらわしています。

(2)罪数
罪数については、1回の取引ごとに犯罪が成立し、複数回の取引が行われた場合には、併合罪(刑法45条前段)となるのが原則と考えられています。併合罪とされた場合には、懲役刑は犯情の重い罪の刑の長期の1.5倍が長期とされ(刑法47条本文、10条3項)、罰金刑については罰金の多額が合計されることになります(刑法48条2項)。

但し、日時・場所の近接性や意思の継続性などから、各取引の間に密接な関係が認められ、全体を1個の行為として評価することが相当である場合には包括一罪となる(1個の犯罪が成立する)ものと考えられます。包括一罪の場合は、上記の法定刑の範囲内で刑が科されることになります。

(関連条文:金融商品取引法)
第197条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(略)
13.第166条第1項若しくは第3項又は第167条第1項若しくは第3項の規定に違反した者

第207条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
1.第197条 7億円以下の罰金刑
2.第197条の2(第11号及び第12号を除く。) 5億円以下の罰金刑
3.〜6.(略)
2 前項の規定により第197条又は第197条の2(第11号及び第12号を除く。)の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。
3 第1項の規定により法人でない団体を処罰する場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

第197条 次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(略)
5.第157条、第158条又は第159条の規定に違反した者
2 財産上の利益を得る目的で、前項第5号の罪を犯して有価証券等の相場を変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させ、当該変動させ、又はくぎ付けし、固定し、若しくは安定させた相場により当該有価証券等に係る有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を行った者は、10年以下の懲役及び3000万円以下の罰金に処する。

(不正行為の禁止)
第157条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
1.有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、不正の手段、計画又は技巧をすること。
2.有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、重要な事項について虚偽の表示があり、又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示が欠けている文書その他の表示を使用して金銭その他の財産を取得すること。
3.有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を誘引する目的をもつて、虚偽の相場を利用すること。


URLhttp://igi.jp/counsel.html

【関連記事】
インサイダー取引規制その1
インサイダー取引規制その2
インサイダー取引規制その3
インサイダー取引規制その4
インサイダー取引規制その5
インサイダー取引規制その6
インサイダー取引規制その7
インサイダー取引規制その8
インサイダー取引規制その9
インサイダー取引規制その10
インサイダー取引規制その11
インサイダー取引規制 | permalink | comments(1) | trackbacks(20) | - | -

この記事に対するコメント

はじめまして。
インサイダー取引の時効について検索をかけていて、このブログにたどり着きました。
既に時効を迎えているインサイダー取引の扱いについてです。
質問なんですが、時効を迎えている場合、罪には問われないのでしょうか?
また、黙ってた側も罪に問われるのでしょうか?

この数年、ずっと黙っている事が苦痛で悩んでました。
情報提供すべきかどうか?
取引をした本人から、口止めをされてた事、
数年にわたり、いやがらせワン切り電話があった事。
ご本人とは、二度と関わりたくないため、無視をし続けてました。
情報提供することで、こちらの情報が先方に漏れたり、関わらなければならなくなってしまうのか?などの方が怖く、通報したい気持ちがありながら、時効を過ぎてしまいました。

この様な場合、何も言わずにそのままにしておいた方がいいのでしょうか?
ご本人の性格から考えると、インサイダー情報を入手したら、取引をする人です。
悩 | 2010/01/16 12:30 AM
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.igi.jp/trackback/801621
この記事に対するトラックバック
4.インサイダー取引規制違反の効果その3 刑事罰その2(没収・追徴) (3)没収・追徴 (A)インサイダー取引によって得た財産と、(B)インサイダー取引によって得た財産の対価として得た財産、インサイダー取引によって得た財産がオプションその他の権利であ
インサイダー取引規制その3 | blog/igi.jp | 2009/02/13 12:51 PM
5.インサイダー取引規制違反による民事責任 インサイダー取引規制違反の民事責任については、金融商品取引法上、特別の規定は設けられていません。インサイダー取引規制導入時の証券取引審議会の「内部者取引の規制のあり方について」(昭和63年2月24日)で、
インサイダー取引規制その4 | blog/igi.jp | 2009/02/17 4:21 PM
5.インサイダー取引規制違反の効果その4 民事責任(続き) (C)上場会社等に対する責任 上場会社等に対する責任については、役員、従業員、従業員、代理人、契約締結者、株主、法令に基づく権限を有する者、情報受領者など、行為者の属性に応じて考える必要
インサイダー取引その5 | blog/igi.jp | 2009/02/18 8:52 PM
6.インサイダー取引規制違反の効果その5 課徴金 課徴金制度は、 証券市場への信頼を害する違法行為又は公認会計士・監査法人による虚偽証明)に対して、行政として適切な対応を行う観点から、規制の実効性確保のための新たな手段として、平成17年4月(公認会計
インサイダー取引規制その6 | blog/igi.jp | 2009/02/19 6:13 PM
6.インサイダー取引規制違反の効果その5 課徴金(続き) (2)課徴金の額の算出方法 課徴金の額は、違反類型ごとに一般的・抽象的に想定される経済的利益相当額として法定された算出方法に従い算出されます。違反者が実際に得た利益額そのものがいくらである
インサイダー取引規制その7 | blog/igi.jp | 2009/02/20 2:12 PM
6.インサイダー取引規制違反の効果その5 課徴金(続きその2) (3)インサイダー取引規制違反の課徴金事例 証券取引等監視委員会事務局は、平成20年6月に「金融商品取引法における課徴金事例集」を公表していますが、事例集に掲載されているもののうち、
インサイダー取引規制その8 | blog/igi.jp | 2009/02/20 4:49 PM
インサイダー取引規制は、会社関係者等のインサイダー取引規制と、公開買付者等関係者のインサイダー取引規制にわかれます。まず会社関係者等のインサイダー取引規制の要件から解説します。 7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等 会社
インサイダー取引規制その9 | blog/igi.jp | 2009/02/23 5:47 PM
7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等(続き) (B)会計帳簿閲覧等請求権を有する株主等【当該権利の行使に関し知つたとき】(166条1項2号) 会計帳簿閲覧等請求権を有する株主等は (a)当該上場会社等の会社法433条1項
インサイダー取引規制その10 | blog/igi.jp | 2009/02/24 2:42 PM
7.会社関係者等インサイダー取引規制の要件その1 会社関係者等(続きその2) (2)元会社関係者(166条1項後段) 当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を166条1項各号に定めるところにより知った会社関係者であって、当該各号に掲げる会社関
インサイダー取引規制その11 | blog/igi.jp | 2009/02/25 1:55 AM
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続き) (E)個々の決定事実(166条2項1号) 個々の決定事実は、以下のとおりです。金商法166条2項1号の列挙事由と、金融商品取引法施行令28条に規定されています。また、軽微基準に
インサイダー取引規制その13 | blog/igi.jp | 2009/03/03 7:33 PM
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続きその2) (E)個々の決定事実(166条2項1号)(続き) ヨ 業務上の提携その他のイからカまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項 政令で定める事項については、金融商
インサイダー取引規制その14 | blog/igi.jp | 2009/03/05 9:59 PM
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実 会社関係者等のインサイダー取引規制における業務等に関する重要事実とは、金商法166条2項各号に定められた事実で、当該会社と子会社について、それぞれ以下の4種類の事実(合計8種類)が規定さ
インサイダー取引規制その12 | blog/igi.jp | 2009/03/06 11:58 AM
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続きその3) (2)発生事実(166条2項2号) 当該上場会社等に166条2項2号に掲げる事実が発生したこと が重要事実となります。 個々の発生事実は、以下のとおりです。金商法16
インサイダー取引規制その15 | blog/igi.jp | 2009/03/25 4:50 PM
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続きその4) (3)決算情報(166条2項3号) 当該上場会社等の売上高、経常利益若しくは純利益(以下この条において「売上高等」という。)若しくは第1号トに規定する配当又は当該上場会社
インサイダー取引規制その16 | blog/igi.jp | 2009/04/06 5:58 PM
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続きその5) (4)バスケット条項(166条2項4号) 前3号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの
インサイダー取引規制その17 | blog/igi.jp | 2009/04/07 4:28 PM
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続きその6) (5)子会社の決定事実(166条2項5号) 重要事実となるのは 当該上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関が当該子会社について次に掲げる事項を行うことについての決定
8.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その2 重要事実(続きその7) (6)子会社の発生事実(166条6号) 当該上場会社等の子会社に次に掲げる事実が発生したこと が重要事実となります。 軽微基準は有価証券の取引等の規制に関する内閣府令
3−3−6−3 子会社の決算情報(7号) 当該上場会社等の子会社(第2条第1項第5号、第7号又は第9号に掲げる有価証券で金融商品取引所に上場されているものの発行者その他の内閣府令で定めるものに限る。)の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当
9.会社関係者等のインサイダー取引規制の要件その3 「公表」 3−4 重要事実の公表 3−4−1 「公表」の意義  インサイダー取引規制は、重要事実が「公表」される前に特定有価証券等の売買等を行うことを禁止するものであり、「公表」後の売買等は禁
FXを取引を行うためのお得な情報満載で貴方に適切な口座開設先が見つかります。
FX口座開設比較 | FX口座開設比較 | 2010/03/09 9:25 AM