1.課徴金制度の概要
金融商品取引法上の課徴金制度は、
証券市場への信頼を害する違法行為(略)に対して、行政として適切な対応を行う観点から、規制の実効性確保のための新たな手段として、平成17年4月(略)から、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す(金融庁:課徴金制度について(注1))
ものとして平成17年4月から導入されています。
課徴金の対象となるのは、インサイダー取引、一定の相場操縦、風説の流布又は偽計などの一定の不公正取引と、有価証券届出書、有価証券報告書、公開買付開始公告、公開買付届出書、大量保有報告書等の不提出・不実施、虚偽記載等で、違反があった場合には、各類型毎に規定された課徴金が課せられることになります。
平成20年の金融商品取引法の一部改正により、平成20年12月12日から、課徴金の対象範囲の見直し、課徴金の金額水準の引き上げ、再度の違反による課徴金の加算、自主申告による課徴金(半額)減算制度の導入、除斥期間の延長などの改正がなされています。以下では、自主申告による課徴金減額制度について、まず説明します。
課徴金制度についての、金融庁のサイトは以下のとおりです。
課徴金制度について
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/02.html
課徴金関係法令・訓令
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/03.html
平成20事務年度課徴金納付命令等一覧
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/05.html
平成19事務年度課徴金納付命令等一覧
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/19.html
18事務年度課徴金納付命令等一覧
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/05/past/18.html
17事務年度課徴金納付命令等一覧
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/05/past/17.html
(注1)
http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/02.html
2.課徴金減算制度
課徴金の減算制度は、課徴金の対象となる違反行為のうち、一定の類型の違反行為に限って、当局による検査等が開始される前に、証券取引等監視委員会に対し違反事実に関する報告を行った場合には、直近の違反事実に係る課徴金の額を半額に減額するというもので(金商法185条の7第12項)、平成20年12月12日施行の改正金融商品取引法の施行により導入されました。減額制度の対象となるのは、以下の6つの場合(のみ)です。
(1) 発行開示書類等の虚偽記載等
(2) 継続開示書類等の虚偽記載等
(3) 大量保有報告書・変更報告書の不提出
(4) 特定証券等情報の虚偽等
(5) 発行者等情報の虚偽等
(6) 法人による自己株式の取得に係る内部者取引
3.課徴金の減額を受けるための報告手続
課徴金の減額を受けるためには、減額制度の対象となる事実を内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣に報告しなければなりません(金商法185条の7第12項)。その報告手続については、「金融商品取引法第6章の2の規定による課徴金に関する内閣府令」67条の7第1項により規定されていますが、証券取引等監視委員会は
「金融商品取引法第185条の7第12項の規定による課徴金の減額に係る報告の手続について」(注2)で手続の詳細を公表しています。
(注2)
http://www.fsa.go.jp/sesc/kachoukin/tetuduki.htm
課徴金の減額を受けるためには、所定の様式による「課徴金の減額に係る報告書」(減額報告書)を提出する必要がありますが、その提出方法は、以下の3つのいずれかとなります。詳細は、上記の証券取引等監視委員会のページの「4.減額報告書の提出について」でご確認下さい(減額報告書の様式もダウンロード可能です(注2))。なお、
減額報告書は、金融庁、財務局においては受理されず、必ず「証券取引等監視委員会事務局 課徴金・開示検査課」に提出する必要があります。
(1)直接持参する方法
(2)書留郵便等による方法(注3)
(3)ファクシミリによる場合(注4)
(注3)普通郵便により提出された減額報告書は受理されないので、ご注意ください。
(注4)証券取引等監視委員会指定の番号に送付する必要があり、他の番号に送信されたものは受理されないので、ご注意ください。ファクシミリ送信の場合は、受理の連絡を受けた後に、送信した書類の原本を郵送する必要があります。
減額報告書の記載事項は、以下の(A)〜(D)で、様式上の記載上の注意は、以下のとおりです。
(A)氏名・連絡先等
(1) 報告書の提出者本人の氏名又は名称及び住所又は所在地を記載した上、押印すること。
(2) 法人の場合には、法人の商号又は名称、本店又は主たる営業所若しくは事務所の所在地並びに代表者の役職名及び氏名を記載した上、代表者印を押印すること。この場合においては、併せて担当責任者の氏名、役職名、連絡場所及び電話番号を記載すること。
(3) 代理人が提出する場合には、上記(1)及び(2)に加えて、代理人による報告である旨及び代理人の氏名を記載した上、本人の押印に代えて代理人が押印すること。この場合においては、併せて委任状を添付すること。
(B)違反の類型
(1) 「発行開示書類等の虚偽記載等」、「継続開示書類等の虚偽記載等」、「大量保有・変更報告書の不提出」、「特定証券等情報の虚偽等」、「発行者等情報の虚偽等」、「自己株式取得の内部者取引」等、報告に係る違反の類型を具体的に記載すること。
(2) 複数ある場合にはそのすべてを記載すること。
(C)違反の概要
(1) 報告に係る違反の概要を具体的に記載すること。
(2) 例えば、
イ 当該違反が発行開示書類等又は継続開示書類等の虚偽記載等である場合は、当該虚偽記載等に係る発行開示書類等又は継続開示書類等を特定するに足りる事項、当該虚偽記載等の内容
ロ 当該違反が大量保有・変更報告書の不提出である場合は、提出すべき大量保有・変更報告書の提出事由及び当該提出事由が生じた時期、当該大量保有・変更報告書の提出期限
ハ 当該違反が特定証券等情報又は発行者等情報の虚偽等である場合は、当該虚偽等に係る特定証券等情報又は発行者等情報を特定するに足りる事項、当該虚偽等の内容
ニ 当該違反が自己株式取得の内部者取引である場合は、当該取引の方法、数量、価格及び時期、違反に係る業務等に関する重要事実の内容、公表がされた時期
等が分かるように、具体的に記載すること。
(D)その他参考となるべき事項
また、上記の証券取引等監視委員会のページでは、「3.減額報告書の記載要領」について、さらに詳細に記載されています。違反の概要の記載については、証券取引等監視委員会による個別の勧告や金融庁による個別の課徴金納付命令の決定が参考になります。
(注5)「課徴金の減額に係る報告書」様式
Word版:
http://www.fsa.go.jp/sesc/kachoukin/tetuduki.doc
PDF版:
http://www.fsa.go.jp/sesc/kachoukin/tetuduki.pdf
(関連条文)
金融商品取引法
(課徴金の納付命令の決定等)
第185条の7
(略)
12 内閣総理大臣は、第1項(第178条第1項第2号に掲げる事実のうち第172条の2第1項(同条第4項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)に該当する事実、第178条第1項第4号に掲げる事実のうち第172条の4第1項若しくは第2項に該当する事実、第178条第1項第7号に掲げる事実、同項第10号に掲げる事実のうち第172条の10第1項に該当する事実、第178条第1項第11号に掲げる事実又は同項第16号に掲げる事実のうち第175条第1項(同条第9項において準用する場合を含む。)に該当する事実があると認める場合に限る。以下この項において同じ。)、第6項、第7項又は前2項の決定をしなければならない場合(同号に掲げる事実のうち同条第1項(同条第9項において準用する場合を含む。)に該当する事実があると認める場合にあっては、当該事実に係る第166条第1項に規定する売買等が、第175条第9項に規定する上場会社等による会社法第156条第1項(同法第163条及び第165条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定による自己の株式の取得である場合その他これに準ずる場合として内閣府令で定める場合に限る。)において、次の表の第1欄に掲げる者が、同表の第2欄に掲げる規定に該当する事実について同表の第3欄に掲げる処分が行われる前に、当該事実を内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣に報告しているときは、同表の第4欄に掲げる額に代えて、当該額に100分の50を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命ずる旨の決定をしなければならない。
(表についてはこちらを参照してください。)
金融商品取引法第6章の2の規定による課徴金に関する内閣府令
(法第172条の2第1項に該当する事実等の報告)
第61条の7 法第185条の7第12項の規定による報告を行おうとする者は、別紙様式による報告書を、次に掲げるいずれかの方法により、証券取引等監視委員会に提出しなければならない。
1.直接持参する方法
2.書留郵便、民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号。次項において「信書便法」という。)第2条第6項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第9項に規定する特定信書便事業者による同条第2項に規定する信書便の役務であって当該一般信書便事業者若しくは当該特定信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うもの又はこれらに準ずる方法により送付する方法
3.ファクシミリを利用して送信する方法
2 前項第2号に掲げる方法により同項に規定する報告書が提出された場合は、その発送の時(当該報告書を郵便事業株式会社の営業所であって郵便窓口業務の委託等に関する法律(昭和24年法律第213号)第2条に規定する郵便窓口業務を行うもの(同法第3条第1項若しくは第3項の規定による委託又は同法第4条の規定による再委託を受けた者の営業所を含む。)に差し出した日時を郵便物の受領証により証明したときはその日時、その郵便物又は信書便法第2条第3項に規定する信書便物(以下この項において「信書便物」という。)の通信日付印により表示された日時が明瞭であるときはその日時、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日時のうち日のみが明瞭であって時刻が明瞭でないときは表示された日の午後12時)に、当該報告書が証券取引等監視委員会に提出されたものとみなす。
3 第1項第3号の方法により同項に規定する報告書が提出された場合は、証券取引等監視委員会が受信した時に、当該報告書が証券取引等監視委員会に提出されたものとみなす。
4 第1項第3号の方法により同項に規定する報告書の提出を行った者は、遅滞なく、当該報告書の原本を証券取引等監視委員会に提出しなければならない。
5 第1項に規定する報告書は、日本語で作成するものとする。